雨は止まずに
ざあぁぁぁぁ…、雨はまだ、止みそうにない。
「咲、お風呂ありがとう」
「ううん。あったまった?」
「うん。暑いくらいだよ」
「え…? わ、」
バスタオルを肩に下げて、滝沢が後ろから腕を伸ばしてくる。
テーブルの前に座り込んでいた咲はビックリして小さく声を上げたが、逃げるつもりはない。
左右から伸びてきた腕に、ぎゅう、と抱きすくめられる。
ふわり、と自分が使っているものと同じシャンプーの香りが微かに漂ってきた。
胸の前で組まれた腕に呻き声を飲み込むと、更に追撃があった。
「ほら、あったまったでしょ?」
耳よりも少し上から降ってきた声に、頷くこともできない。
暑いくらい、と彼は言うけれど、咲のこころは一瞬で熱いくらいに火照ってしまった。
滝沢くん、と振り向こうとすると、彼はくすりと余裕たっぷりの笑い声を残して抱擁を解いた。
離れていく腕に安心すると同時に、何となく残念な気持ちも生まれて、咲は気恥ずかしそうに、ひっそり息を吐いた。
そんな彼女の隣に腰を下ろして、滝沢はがしがしと頭を拭く。
咲は無言で、冷たい麦茶を喉に流し込む。雨の音が耳に届くのに、内側から響くドキドキが気になってしまう。
滝沢と一緒に居ると、この胸はいつだって彼を呼んでしまうのだ。
「あっちー」
「クーラーの温度、下げる?」
「あぁ、いいよ? そこまでしなくても」
「ん…」
「そうえいばさ、咲」
「なぁに?」
「これ、どうしたの?」
バスタオルから手を離して、滝沢はズボンを引っ張り、下着をちらりと見せる。
あ、と声を漏らして、咲は無意味に手をぱたぱたと振った。
「あの、それは」
「うん」
「この前、買ってきたんだけど。えっと、…その、滝沢くんに」
「俺に? じゃあ、俺が使ってよかったんだ?」
「う、うん。…ていうか、滝沢くんに使ってもらわないと、困るよ…」
「んー、なに?」
「な、なんでもない!」
「そう? ま、安心した。俺以外のヤツの為って言われても、困るしね」
「…滝沢くん?」
「何でもないよ。で、どこで買ってきたの?」
「え? えっと、…ほら、私この前、みっちょん達と遊園地行ったでしょ? あそこで買ってきたんだよ」
「ふうん。だからキャラクターモノなんだ、これ」
「うん。見覚えない? そのキャラクター」
「…あんまりねぇなあ。最近のでしょ? たぶん」
「当たり。私もあんまり知らないの」
「知らないのにこれ選んだの?」
「えー…と。あの、そもそも私、そういうの買う予定なくて…。
普通のお土産にしようと思ってたんだけど、おネエとみっちょんに、いろいろ言われて」
「…なるほどね。なんとなく分かったよ。なんとなくね」
お土産コーナーで、おネエとみっちょんにからかわれる(?)咲を想像して、滝沢は頬を緩めた。
濡れた下着を再びはくのも遠慮したいところだったので、替えの下着があったのはありがたかったが、風呂から上がって脱衣所に置いてある新品の下着を見た時は正直驚いた。が、そういう経緯で新品の下着(装着中)があるのなら問題ない。
「つーか、下着まで売ってるんだ。遊園地と下着じゃ、結びつかねーだろ」
「うーん…でも、洋服も置いてあるみたいだったよ、結構」
「マジ?」
「うん。キャラクターモノなら、Tシャツが多いけど、民族衣装っぽいのもあったかな。あんまりよく見てこなかったけど」
「ふうん…。でも、下着まであるのはちょっと予想外だな。男物だけなの?」
「ふぇ?」
「あー、下着の話」
うっかり口を滑らせた。失言に眉を顰めた滝沢に、きょとりとした顔を向けて、咲はしばし考え込む。
雨音だけが数秒、部屋に満ちた。
麦茶の入ったコップを持って、くるり、と中の氷を回しながら、咲が口を開く。
「うん…。たぶん、女物は表に置けないから」
「…なるほど。そりゃそうか」
お土産屋さんに女性ものの下着がずらりと並んでいるとしたら、それに付き合う男性陣はどうすればいいのだろうか。
想像してみたら、どうしよもない感じになった。訊くまでもないことだったと失態にすこしばかり反省しながら、滝沢は納得する。
「滝沢くんは、そういうキャラクターモノの下着、平気?」
「ん? まぁ、平気だけど…」
「…よかった。キャラクターモノの下着って、好き嫌い、分かれそうだから、ちょっと不安だったんだ。正直ね、渡しそびれてたの」
「そうなんだ? でも俺、咲からもらったものなら、何でも嬉しいと思うけどね」
「…え、っ…」
するり、といつの間にか伸びてきていた滝沢の手が、咲の指先に絡む。
風呂上りであったかい指先にドキリとして、咲は顔を向ける。
澄んだ黒瞳に魅せられて、とくん、高鳴った胸に気付かないふりはできないまま、近付いてくるその唇に、咲はゆっくり瞼を下ろす。
雨は止まずに、鼓動が速まる。その音を隠すように、雨は強くなっていた。
■END
前回の続きのお話。哀華さんにしては、会話が多い…かな? たぶん。
ちなみに私はキャラクターモノの下着に色気は感じません。(誰も訊いてない。)
や、見たことないんで分からないけど。いざって時にキャラクターモノの下着…雰囲気壊れそうな気がしなくもないけど、気にしない人は気にしないのですよね。
哀華さんの想像上、哀華さんは趣味じゃないかなーって話なんで、好きな人は好きでいいと思います。
ほんとは滝沢くんと咲ちゃんに、以下のような会話をしてほしかったんですが…。
「咲もキャラクターモノの下着ってつけるの?」
「え? …たまに? 下だけなら…、あるよ」
「ふーん…」
「……な、なに?」
「いや、見たことないから、どんなのつけてんのかなって」
「…! は、恥ずかしいから、内緒」
「そっか。ま、別にいいけどね。どうせ脱がせちゃうし?」
「…っ! 滝沢くんっ!」
「あははっ。嘘うそ。キャラクターモノでもいいけど、俺はどっちかって言うと、いつもの普通の下着の方が可愛いと思うなぁ」
「もう、そんなこと言…って、え? ……、そ、そう?」
「うん。咲って女の子らしい下着してて可愛いよね」
「…ぁ、……ありが、とう?」
「どういたしまして。って、礼を言われるようなことでもないけどさ」
「だ、だってどう反応すればいいのか分からなくて…。あ、なんで笑うの滝沢くん!?」
「いや、うん? おかしくてさ、ごめん。…あはははっ」
「…もうっ」
笑顔で言うんですね滝沢くん。ていうかさり気なくエロリスト発言してますね滝沢くん。
すいません本当に書きたい滝沢 朗はこういうどSの香りがする爽やかエロリストです。(爆)
や、楽しかった。サイトにまで手が回ってないですが、妄想は吐き出したいです。
本日もお付き合いありがとうございました!!
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ざあぁぁぁぁ…、雨はまだ、止みそうにない。
「咲、お風呂ありがとう」
「ううん。あったまった?」
「うん。暑いくらいだよ」
「え…? わ、」
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テーブルの前に座り込んでいた咲はビックリして小さく声を上げたが、逃げるつもりはない。
左右から伸びてきた腕に、ぎゅう、と抱きすくめられる。
ふわり、と自分が使っているものと同じシャンプーの香りが微かに漂ってきた。
胸の前で組まれた腕に呻き声を飲み込むと、更に追撃があった。
「ほら、あったまったでしょ?」
耳よりも少し上から降ってきた声に、頷くこともできない。
暑いくらい、と彼は言うけれど、咲のこころは一瞬で熱いくらいに火照ってしまった。
滝沢くん、と振り向こうとすると、彼はくすりと余裕たっぷりの笑い声を残して抱擁を解いた。
離れていく腕に安心すると同時に、何となく残念な気持ちも生まれて、咲は気恥ずかしそうに、ひっそり息を吐いた。
そんな彼女の隣に腰を下ろして、滝沢はがしがしと頭を拭く。
咲は無言で、冷たい麦茶を喉に流し込む。雨の音が耳に届くのに、内側から響くドキドキが気になってしまう。
滝沢と一緒に居ると、この胸はいつだって彼を呼んでしまうのだ。
「あっちー」
「クーラーの温度、下げる?」
「あぁ、いいよ? そこまでしなくても」
「ん…」
「そうえいばさ、咲」
「なぁに?」
「これ、どうしたの?」
バスタオルから手を離して、滝沢はズボンを引っ張り、下着をちらりと見せる。
あ、と声を漏らして、咲は無意味に手をぱたぱたと振った。
「あの、それは」
「うん」
「この前、買ってきたんだけど。えっと、…その、滝沢くんに」
「俺に? じゃあ、俺が使ってよかったんだ?」
「う、うん。…ていうか、滝沢くんに使ってもらわないと、困るよ…」
「んー、なに?」
「な、なんでもない!」
「そう? ま、安心した。俺以外のヤツの為って言われても、困るしね」
「…滝沢くん?」
「何でもないよ。で、どこで買ってきたの?」
「え? えっと、…ほら、私この前、みっちょん達と遊園地行ったでしょ? あそこで買ってきたんだよ」
「ふうん。だからキャラクターモノなんだ、これ」
「うん。見覚えない? そのキャラクター」
「…あんまりねぇなあ。最近のでしょ? たぶん」
「当たり。私もあんまり知らないの」
「知らないのにこれ選んだの?」
「えー…と。あの、そもそも私、そういうの買う予定なくて…。
普通のお土産にしようと思ってたんだけど、おネエとみっちょんに、いろいろ言われて」
「…なるほどね。なんとなく分かったよ。なんとなくね」
お土産コーナーで、おネエとみっちょんにからかわれる(?)咲を想像して、滝沢は頬を緩めた。
濡れた下着を再びはくのも遠慮したいところだったので、替えの下着があったのはありがたかったが、風呂から上がって脱衣所に置いてある新品の下着を見た時は正直驚いた。が、そういう経緯で新品の下着(装着中)があるのなら問題ない。
「つーか、下着まで売ってるんだ。遊園地と下着じゃ、結びつかねーだろ」
「うーん…でも、洋服も置いてあるみたいだったよ、結構」
「マジ?」
「うん。キャラクターモノなら、Tシャツが多いけど、民族衣装っぽいのもあったかな。あんまりよく見てこなかったけど」
「ふうん…。でも、下着まであるのはちょっと予想外だな。男物だけなの?」
「ふぇ?」
「あー、下着の話」
うっかり口を滑らせた。失言に眉を顰めた滝沢に、きょとりとした顔を向けて、咲はしばし考え込む。
雨音だけが数秒、部屋に満ちた。
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「うん…。たぶん、女物は表に置けないから」
「…なるほど。そりゃそうか」
お土産屋さんに女性ものの下着がずらりと並んでいるとしたら、それに付き合う男性陣はどうすればいいのだろうか。
想像してみたら、どうしよもない感じになった。訊くまでもないことだったと失態にすこしばかり反省しながら、滝沢は納得する。
「滝沢くんは、そういうキャラクターモノの下着、平気?」
「ん? まぁ、平気だけど…」
「…よかった。キャラクターモノの下着って、好き嫌い、分かれそうだから、ちょっと不安だったんだ。正直ね、渡しそびれてたの」
「そうなんだ? でも俺、咲からもらったものなら、何でも嬉しいと思うけどね」
「…え、っ…」
するり、といつの間にか伸びてきていた滝沢の手が、咲の指先に絡む。
風呂上りであったかい指先にドキリとして、咲は顔を向ける。
澄んだ黒瞳に魅せられて、とくん、高鳴った胸に気付かないふりはできないまま、近付いてくるその唇に、咲はゆっくり瞼を下ろす。
雨は止まずに、鼓動が速まる。その音を隠すように、雨は強くなっていた。
■END
前回の続きのお話。哀華さんにしては、会話が多い…かな? たぶん。
ちなみに私はキャラクターモノの下着に色気は感じません。(誰も訊いてない。)
や、見たことないんで分からないけど。いざって時にキャラクターモノの下着…雰囲気壊れそうな気がしなくもないけど、気にしない人は気にしないのですよね。
哀華さんの想像上、哀華さんは趣味じゃないかなーって話なんで、好きな人は好きでいいと思います。
ほんとは滝沢くんと咲ちゃんに、以下のような会話をしてほしかったんですが…。
「咲もキャラクターモノの下着ってつけるの?」
「え? …たまに? 下だけなら…、あるよ」
「ふーん…」
「……な、なに?」
「いや、見たことないから、どんなのつけてんのかなって」
「…! は、恥ずかしいから、内緒」
「そっか。ま、別にいいけどね。どうせ脱がせちゃうし?」
「…っ! 滝沢くんっ!」
「あははっ。嘘うそ。キャラクターモノでもいいけど、俺はどっちかって言うと、いつもの普通の下着の方が可愛いと思うなぁ」
「もう、そんなこと言…って、え? ……、そ、そう?」
「うん。咲って女の子らしい下着してて可愛いよね」
「…ぁ、……ありが、とう?」
「どういたしまして。って、礼を言われるようなことでもないけどさ」
「だ、だってどう反応すればいいのか分からなくて…。あ、なんで笑うの滝沢くん!?」
「いや、うん? おかしくてさ、ごめん。…あはははっ」
「…もうっ」
笑顔で言うんですね滝沢くん。ていうかさり気なくエロリスト発言してますね滝沢くん。
すいません本当に書きたい滝沢 朗はこういうどSの香りがする爽やかエロリストです。(爆)
や、楽しかった。サイトにまで手が回ってないですが、妄想は吐き出したいです。
本日もお付き合いありがとうございました!!
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Re:無題
こんばんは! お返事が遅れてすみません。
またいらしてくれてありがとうございます~!^^
うちの滝沢くんを気に入ってもらえて嬉しいです><
ちょっと更新ペース落ちてますが、また覗きにきてもらえるとありがたいです。
元気になるコメントありがとうございますー!
またいらしてくれてありがとうございます~!^^
うちの滝沢くんを気に入ってもらえて嬉しいです><
ちょっと更新ペース落ちてますが、また覗きにきてもらえるとありがたいです。
元気になるコメントありがとうございますー!
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