■東のエデン/滝咲
※劇場版Ⅱの未公開なのにED後のお話です。ご注意ください。
※もしかすると、やや大人風味(かもしれません)です。
ご覧になる方は、「つづきを読む」からお願いします。
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不可抗力で知った鼓動
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「あ、っ」
ガタガタンッ、きゅいいぃぃい─── 緊急停止を知らせる音がして電車が大きく揺れる。衝撃に、咲の唇から声が漏れた。
急停車したせいで、吊り革や広告がぶらぶらと揺れており、あまりの衝撃に床へ倒れこんでしまった人もいたようだ。
ドアの前を陣取っていた滝沢と咲は、ほかの乗客に押されて身動きもろくに取れない。倒れこんだ誰かを助け起こすのは、近くの乗客に譲った方が懸命だろう。
ずしりと背中に感じる重みに耐えながら、滝沢は何とか咲が苦しくない程度のスペースを確保した。
優先席の横の空間に咲を閉じ込めるような体勢となってしまったけれども、仕方あるまい。
吃驚したように目をぱちぱちとさせて、心配そうに床に倒れた男性に視線を向ける咲を、滝沢は見守る。
やがて彼女の表情がほっとしたものになると、滝沢はようやく声をかけた。
「咲。大丈夫だった?」
「あ、うん。私は平気。滝沢くんは…?」
「俺も何ともないよ」
お互いの無事を確認し、微笑みあう。
車内アナウンスでは、線路上に障害物が見付かった為、急停車したと流れている。
あちこちから不満の声が上がって、電車内は騒がしくなった。
そのざわめきを聞き流しながら、咲はそっと滝沢を見上げた。
咄嗟に咲を守ってくれた腕は周囲の押しに耐えて軋んでいる。
自分を守る為にそうしてくれているのかと思うと胸が苦しくなって、咲は何とか彼の腕へ手を伸ばすと、『無理にスペース作ってくれなくていいよ』と言う代わりに、滝沢の腕を自分の方へ引き寄せる。
予想外の方向へ導かれた滝沢の手は、ぎゅうぎゅうと押される力に抵抗できず、咲の予定していた位置とはまったく別のところへ落ち着いてしまった。
「ひゃ、…た、…! あの、……滝沢くん…?」
「…これって俺が悪い?」
気まずさと照れたような色を見せる滝沢を直視できず、咲はさっと頬を赤くして俯く。
しかし俯いた先に滝沢の手。その腕を掴む自分の手。
咲ははっきりと見てしまった。
滝沢の手が落ち着いているのは、自分の胸だった。
事件が起きた時、感触だけでわかってはいたが、免疫のない咲はそれを目の当たりにしてしまい更なるパニックに陥る。
目をぐるぐるさせている咲の様子に気が付いている滝沢だったが、混雑した車内ではろくな身動きが取れない。
しかも咲が腕を引き寄せたことにより、力の入りにくい体勢で固定されてしまっている。せいぜい咲の胸を潰さないように気をつけることくらいしか、今の彼にはできなかった。
一度そういうことを意識してしまうと、彼も男である。どうしても、思考が別方面へ飛びかける。
「た…きざ、わ……くん」
消え入りそうな声に、ハッとする。
手のひらの中のふにゃふにゃとした柔らかさに、危うく滝沢は此処が電車内だということを忘れそうになった。
取り繕うように顔を上げると、なに、と返事をするが、咲ほどではないにしろ彼の声もまた上擦っていた。
見つめあい、言葉が出てこない。頬を朱に染めた咲と、いつもの笑顔を崩して別の笑みを浮かべている滝沢は、そのまま息を潜めて唾を飲む。
とくん、とくん
どくん、どくん
アナウンスもざわめきも、何も聴こえない。
聴こえるのはひとつの音、感じるのはもうそれだけ。
「ごめん咲。今、動けそうにない」
「う、うん。いいよ。半分くらい私がやったことだし、電車混んでるからしょうがないし…」
別にいやじゃないし、と思っても流石に口に出せなかった。
ごにょごにょと滝沢へ向けて呟いて、咲は羞恥に耐えられず、視線をドアへ向けてしまう。
硝子に映った自分の顔は思っていたよりも頬が緩んでいて、咲はもっと恥ずかしくなった。
自分の身体に触れている滝沢の手が、大きい。今まで滝沢と手を繋いだことがある。肩を抱かれたこともある。唇同士が触れ合ったこともある。でも、今のこれは経験のないことで、唇同士が触れ合うくらい特別な意味を持っている筈のことで。
咲はまた、ぐるぐると考え始める。眩暈がしそうだ。
はあ、と大きく息を吐いて、咲は滝沢の腕から手を離した。狭いので思うように動かせず、彼の腕から手を離すことには成功したものの、彼の胸板の前で止まってしまう。
これ以上、無闇やたらと暴れても、寧ろ彼との接触率を上げてしまうだけでは? と、暫くジタバタとしてから咲は思い当たった。
仕方なく、咲は滝沢の胸板へ触れた手をそのままにする。
電車が動き出し、次の駅で人の出入りがあれば、多少はこの混雑も解消されるだろう。
唇を結んで、咲は再び窓ガラスに目を向ける。
流石の滝沢もこんな時どうすればいいのか分からないのか、黙っている。咲はそれに少し安心した。
照れくさそうな、困ったような滝沢の横顔をひっそりと見つめる。
こんな状態だからか、彼の瞬きひとつが、咲の胸を高鳴らせてしまう。
けれど咲は気が付いた。
加速する鼓動は、自分の手のひらも感じている。
つまり滝沢も、咲と同じように感じているということだ。
窓ガラスから滝沢へ視線を移すと、滝沢も咲へ目を向けた。
「次の駅で一回降りちゃおうか」
「え…?」
いつもと変わらぬ態度の滝沢に戸惑いの声を上げると、彼は笑った。
「喉渇いたでしょ?」
「あ、うん…」
指摘されて、咲は喉がカラカラに渇いていることに気付く。
全くそんなことにまで気が回らなかったが、滝沢はそれに思い当たる余裕があったのだろうか。
やっぱり滝沢くんって頼りになるなぁ、とぼんやり考えて、咲は頷く。
咲の返事を待っていた滝沢はその反応を見ると、悪戯っぽく肩を竦めた。
「俺も喉、カラカラなんだよね」
ぱちり、と咲は目を瞬かせた後、おかしそうに笑った。
■END
ED後フライング、出掛ける二人とハプニング。
デートと口に出してないけど、デート以外の何物でもないじゃないかと読み返して思いました。(…)
にしても、いいんですか哀華さん! 滝咲の初スキンシップやや大人向けかも?がこんなので(笑)
もうちょいムードがあって滝沢くんがリードしてたりするネタの方が私は見てみたいのに。
でもそういうネタを書き始めると、こういう嬉し恥ずかし雰囲気(?)ネタは書けなくなっていくのです。(たぶん、羞恥とかがマヒしてくから。笑)
ともあれ、やっと滝咲がイチャイチャ?しているネタをお届けできた気がします。
もうすぐ劇場版Ⅱも公開ですね。最初は混むと思うので、どうしよう。いつ行こう。
前売りは二枚GETしてるので二回は行く予定ですが、どうかしあわせな結末を彼等に。
ノブレス・オブリージュ、どうか劇場版Ⅱの結末が優しいものであることを切に願います。
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