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エデンに響き渡るのは、焦がれた声。
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■東のエデン/滝咲
※劇場版Ⅱの後(ED後)のお話です。ご注意ください。

ご覧になる方は、「つづきを読む」からお願いします。

焦がれ続けて、溺れたい




「暑いね…」

じりじりと蒸し暑い日差しを避けるように手のひらを翳して、咲が呟く。
帽子をかぶってくればよかったと後悔する咲を気遣って、滝沢は人混みを縫うように日陰へ歩を進めた。

繋いだ手は生温く、すこし汗ばんでさえいる。
でも、離す気にはお互いになれなくて、繋がりを深めるように指を絡めた。

日陰に守られて、日向よりはいくらか涼しくなった。
とはいえ、人混みの中ではさして涼しさも実感できない。
熱せられたアスファルトからむわっと立ち昇るなまぬるい空気に、汗が出てきそうだ。

ふと咲が路地へ目を向けると、アイスクリーム屋が見えた。
人は並んでいるようだが、店舗が小さく食べるスペースが少ないのだろう。それほど待たずに済みそうな列だった。
知らずに直進していた足が鈍ると、気が付いた滝沢が歩を止めて振り返った。
あ、という顔をして咲が『何でもない』と歩き出すが、滝沢は繋いだ手を握って、その場に留まる。
そして咲が目を向けていたものに当たりをつけると、

「食べたいの?」

にっこりと笑って、咲の返事を待たずに行き先を変えた。
繋いだ手を引かれ、咲は何も言えずについて行く。
返事など訊かずとも分かっている、というような滝沢の笑顔に、悔しいがどきりとした。否定できなかったからだ。


最後尾に並ぶと、店の前に看板があった。看板には今日を含めて『期間限定! ダブルを頼むともう一個!』という文字が躍っている。
どうやらキャンペーン中らしい。瞳を輝かせた咲を日差しから守るように立った滝沢は、ラッキーだったね、と声を漏らした。

「うーん、どうしようかなぁ」
「トリプル、頼まないの?」
「結構、量あるんだ。前に頼んだことあるんだけど、多くてね。
 みっちょんと私はお腹一杯になっちゃった。おネエはこういうの好きで、ぺろりだったけど」
「ふーん。それってレギュラー?」
「うん、そうだよ。あ、ちょうど今レジ前にいる人が受け取ってる」
「へえ。確かに、一人で食べるにはすこし多いかもね」
「うん。しかもその時は、ちょっと食べた後だったから」

なるほどね、と頷いて、滝沢は列を詰める。
店内に貼られたアイスクリームのリストを一生懸命に眺めている咲を見て、滝沢は密かに笑っていた。

レジの横にテーブル席が幾つかあるが、全て埋まってしまっている。
レジを済ませてアイスクリームを受け取った人達は、最初から期待していなかったのか、テーブル席には目もくれずに歩いていった。
また列が進み、咲と滝沢は並んで踏み出した。

身を乗り出すようにアイスクリームのリストを眺めていた咲が、うん、と呟いて身を引く。

「決まったの?」
「ううん。まだ、トリプルにしようか悩んでるとこなの。アイスを一個、決めただけ」

困ったように笑った咲に、滝沢は提案する。

「トリプル頼んで半分こするのは、どう?」
「え?」
「一人じゃ食べきれないんでしょ?」
「う、うん。…それがいいかも」
「じゃあ、決まり」

はにかんだ咲に笑いかけて、どのアイスにしようか、と滝沢もリストに目を向ける。
ちらり、と咲は滝沢の横顔を見やる。アイスを選んでいる彼は思いのほか子どもっぽくて無邪気だ。けれど、繋いだ手は無骨で男の子なんだと意識せざるをえない。
密やかに認めて、咲は知らない間にその手を握り締めていた。
滝沢が振り向く。ひとつの名前を紡ぐ為に動いた唇と、突き出た喉仏に、いやにドキドキした。

「咲」
「な、…なに?」
「俺、チョコがいいんだけど、咲はどれがいいの?」
「えっと…あれ。チーズケーキ入ってるの」
「OK。もう一個は、どうする?」
「うん…滝沢くんは、なに食べたい?」
「咲、」
「─── っ?」

名前の後に続く言葉はなく、確かな間があった。
妙なところで区切られて、咲の心臓が跳ね上がったが、滝沢は気付かずに続ける。

「決めてよ。ただ、今のままだとこってり系だから爽やかな方がいいかな」
「…、そ、そうだね。シャーベットにしようかなって思ってるよ」
「うん。…あれ、咲、顔赤いけど?」
「え!? あ、暑いから、アイス食べれば涼しくなるよっ」
「そう?」

首を傾げる滝沢の前で、ぱたぱたと手を振ってみせる。
と、そこで助け舟が出た。店員がショーケースの前に立って、『お待ちのお客様、お決まりでしたらどうぞー』と声をかけてくる。
いつの間にか、また列が進んでいたらしい。ぱっと前を向いた咲に続いて、滝沢も店内へ足を踏み入れた。

「トリプルひとつ。レギュラーで」
「かしこまりました。カップとコーン、どちらになさいますか?」
「咲、カップでいいかな? コーンだと食べにくそうだし」
「うん、いいよ」
「それでは、カップでご用意いたします。アイスのほうは?」

咲の要望を確認してから店員に注文して、滝沢はレジへ進む。
レジ横のショーケースには、アイスクリームケーキのお品書きがあった。
待っている間にそれを眺めている咲の横を、一組の男女が通り過ぎる。
何気なく顔を上げると、すぐ傍の席が、空いていた。

「お待たせしましたー」

レジを済ませた滝沢のもとへ、タイミングよく店員が三色のアイスクリームが入ったカップを持ってくる。
受け取った滝沢は、迷うことなく咲を空いている席の奥へ進ませた。
席について、一息つく。滝沢がカップを差し出してきた。
カラフルなアイスクリームの山には、両サイドに蛍光色のスプーンが添えられている。

「ちゃんとスプーン、二個ついてくるんだね」
「二人でスプーン一個だと、食べてる間に溶けちゃうんじゃねぇかな」
「あはは。現実的だね、滝沢くん」
「そうでもないよ。俺はスプーン一個でもよかったし」
「? どうして?」
「さあね」
「教えてくれないの?」
「溶けちゃうよ、アイス」
「うぅ」

細められた目と、笑みをかたどる口元に負けて、咲は大人しくスプーンを手にした。
たぶん、訊いたらいけないのだ。爆弾を隠し持っているような気配がするから。
経験上そう納得して、咲は自分が選んだアイスクリームをすくった。
向かいでは、滝沢がチョコレートアイスクリームを口に運んでいる。

「滝沢くんって、」
「ん?」
「チョコ、すきなの?」
「んー、どうかな。きらいではないよ」
「そっか。私、ビターが好き。ミルクはちょっと甘すぎて、苦手なの」
「そうなの? 良かった、これ、ミルクチョコは入ってねぇみたいだから」

苦手なのあるんなら、先に言ってね。訊くの忘れちゃったよ、俺。

安心したように、チョコレートアイスクリームをひとすくい。
咲は蛍光ピンクのスプーンに盛られたチョコレートアイスクリームを見る。ミルクはすこし苦手だが、基本的にチョコレートは好きだ。美味しそう、と咲の目がぱちぱちと物欲しそうに瞬く。

「食べる?」
「え…いいの?」
「もちろん。元々、半分にするつもりだったしね。取っていいよ。食べさせてほしいって言うんなら、別だけど」

悪戯っぽく笑った滝沢の前で、もう、と咲は微かに頬を膨らませた。
いただきます、と断ってから、自分のスプーンでチョコレートアイスクリームを口に運ぶ。
口の中に入れた途端にアイスが溶け出して、その中からごろりとしたチョコレートの塊が現れた。

これ、もらうね。 滝沢が咲の選んだアイスクリームに、スプーンを突き立てる。
こっくりと頷いて、咲はチョコレートを噛み砕く。口の中が冷えているせいか、チョコレートの塊はなかなか溶け出さなかった。
滝沢はスプーンの上に乗っかったアイスクリームをぼんやり眺め、呟く。

「そっか。別に、スプーン二個でも結果は同じだったんだ」

ひとりごと、だろう。何でもないように、滝沢はアイスクリームを口に含んだ。
ぺろりと、スプーンを舐める。見ていられなくて、俯いた。

「ん、美味いね、これ」
「うん。それ、すきなの」

咲は、聴こえなかったふりをして答えた。
火照る頬を冷やすように、目を合わせないまま、シャーベットにスプーンを伸ばす。

ふと店の外を見ると、長蛇の列ができていて、じりじりと照り付ける太陽のひかりが眩しい。

「外、出たら暑そうだ」
「うん」

咲がスプーンで掘った箇所からシャーベットをすくった滝沢を、ちらりと眺めた。
今更数えるのもバカらしく、たぶん数えたところで何の意味もないそれの回数を数えて、咲は鳴り止まない鼓動を隠すように息を吐く。

きっとアイスクリームに溶けて混ざり合う、ひとつの想い。
スプーンに残った唾液がカップの中の溶け出したアイスクリームに付着して、それを口にした途端、毒のように身体の中を巡っていくような錯覚が、消えない。いつかそれがこころから溢れ出して、自分の身体を包み込んでしまうのだろう。もしかすると、既に溺れているのかもしれない。ふとした瞬間に息もできなくなるくらいには、溺れている。

だけど、その毒に侵されることを、互いに望んでいる。
それはずっと焦がれていた(焦がれている)、世界でただひとつだけの禁じられた実なのだろう。

胸の奥で疼いている想いに急かされるように、冷たいアイスを口へ運ぶ。
顔を上げると、窓から視線を戻していた滝沢が、ただ優しく笑ってスプーンを舐めていた。

■END

ただのイチャイチャです。最近なにかとシリアスなものを書いている気がしたので。
…気のせい? どうだろう。携帯とかでは、わりと本編ネタ書いてるから、それもあるかもしれないです。

滝沢くんと咲ちゃんの日々。夏。
テレビシリーズが夏だったら、もうちょい甘さ控え目の滝咲だったのかな。
どうにも冬ネタばかり書いている気がしてなりません、哀華さん。
Afterは冬だと思うんだもの…。たまには夏に滝咲を。(笑)

微妙に、いつもと書き方を変えたというか、冗長な部分を削ったつもり。つもり。ええ、つもりです。
ノーチェックでUPするので、本当に『つもり』で終わってる話かもしれないけど。
寧ろ自分にしか分からない微細な削除かもしれないです。(爆)

なんだか書き殴るの久しぶりな気がします。実際はそんなことないんだろうけれど…。
昨日騒いでたポメラ起動しない(;・∀・)…事件ですが、リセットボタン押下で一応復帰しました。よかった><
でもネタ抽出しないまま書き殴る哀華さん。ん、書きたくなってしまったので、つい。
今日はどうしたのかしらってくらいFirefoxが重たくなる。文字打ってるときに鈍い反応されるとこわい。
そんな窓開いてないんだけどな…むしろ、いつも通りなんだけど。なんだろう。
カードリーダ読み込みのせい? でもタスクマネージャ見るとFirefoxがCUP喰ってるので、首を傾げる哀華さんです。

お付き合いありがとうございます。
拍手もありがとうございます。ぱちぱち、励まされます。

追記


雑記で書くようなことでもないので。
サイトの更新もしましたー。たぶん、携帯、ポメラ、どっちも出せるネタは出せた…かな?
ころころ残ってるんですが、それはまだ出せるかたちではないので、ある程度かたちが整ったら放出したいなーと考えてます。
全力で書いているつもりですが、意外と自分が設定中毒だったことを最近自覚して、アレがこうだからつまりここでは…と考え、また書きたいネタが増えていくやら、既に書いた話はちょっとこっちに加筆修正必要だけど含めるべきだったかもしれないなーとか。いやでもそんなこと言ってたらいろいろ終わらないし妥協ポイントってものは探すべきだよね、うん。
そんな∞ループです。そもそも設定中なつもりは全くなかったのだけれども…。

明日は『憂鬱な月曜日』ですが、エデンを糧にがんばるのです。

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