■東のエデン/滝咲
※劇場版Ⅱの後(ED後)のお話です。ご注意ください。
ご覧になる方は、「つづきを読む」からお願いします。
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startravel
真冬の空の下、冷たい風が吹く。マフラーに顔を埋めた咲が、どこか遠くを見る眼差しで、ちいさな息を吐いた。
まるで溜め息のようなそれは、けれど焦がれる乙女のごとき様子で、隣に立っていた滝沢は気になって身を寄せた。
触れ合うように腕がぶつかって、咲が顔を上げる。
「ごめんね滝沢くん、寄り道しちゃって」
「いいよ? 今日はぶらぶらしようって空けてたんだしさ」
「うん…」
こくりと頷いて、咲は再び、柵の向こうのホワイトハウスへ目を移す。
彼女が何を考えているのか、詳しいことは滝沢には分からない。
「…なんだか、遠い昔みたい。昨日のことみたいに思い出せるのに」
おかしいね、と懐かしむ瞳はやはり遠い過去を見ている。もう戻ってこないその日に、彼女が何を願うのか。
触れ合ったままの肩をもっと寄せるようにして、滝沢はポケットの中に沈んでいた咲の手を掴んだ。
目を丸くして、咲は滝沢の横顔を見つめる。
「世界にとったら、ここは世界の中心なのかもしれないけどさ」
きょとり、咲は小首をかしげる。
滝沢の言わんとしていることが、よく分からない。
「俺にとっての、世界の中心」
「え?」
「わかんない?」
掴んだ咲の手を引いて、にっと笑う。覗いた白い歯と弾む声に、すこし遅れて意味を察した。
「何それ…」
「咲が居なきゃ廻んない世界なんだよ」
気恥ずかしくて俯いた咲に笑って、滝沢はそう言った。
うそでも嬉しい。彼にとっては、嘘ではないのだろうけれど。でも現実的に考えれば、咲が居なくても世界は廻り続けるし、彼にとっての世界もまた動き続けるだろう。
だから、彼の言うことは、嘘ではないけれど、完全な真実でもない。それは限りなく真実に近い薄れた嘘。
掴まれた手はすこし暖かい。咲は冷え込んでいる自分の手を知る。
求めるように指先を動かすと、滝沢は躊躇うことなく咲の指先に自らの指を絡めた。
繋いだ手に胸から溢れ出しそうな気持ちを閉じ込めて、咲が呟く。
「滝沢くん、ズルイ」
「なんで?」
「…ううん。ありがと」
「どういたしまして。何もしてないけど?」
顔を覗き込むようにして、滝沢が言う。
それは咲が何に対して礼を述べたのか、明らかに理解している様子だ。
ぷうっと頬を膨らませ、咲が可愛らしく滝沢をにらむ。
「滝沢くん…分かっててやってる、よね?」
「んー? ていうかさ、」
「…あ、」
はぐらかすつもりか否かは分からないが、滝沢は繋いだ手を引いて、歩き始める。
急に歩き出した滝沢に慌てて続く咲は、よろけそうになりながら、滝沢にそれを支えられる。
どうしたの、と視線を向ける咲に視線を合わせないまま、滝沢は空を仰いで答える。
「いつまで“滝沢くん”なの?」
「…、え?」
「咲も“滝沢”なのに」
「た、…滝沢くん……!?」
「照れなくてもいいでしょ?」
顔、真っ赤だよ? 振り向いた彼はあっさりとそう言って、きらきら光る瞳で笑った。
「一応、新婚旅行だし」
「う、…うん、それは、その。……そうなんだけど。
…ごめんね、あの…なんか、滝沢くんで慣れちゃってるから、恥ずかしいの。名前呼ぶの。…おかしいよね」
「あぁ、ごめん。真に受けないでいいよ、咲が呼んでくれるなら俺は今のままでもいいから」
「ほんと?」
「勿論。…この名前は、咲がくれたようなもんだし」
「え?」
「んーん。何でもない。さて、ホワイトハウスはそろそろ終わりにして、次、何処行く?」
「うーんと…」
「俺と咲が出逢った場所の次…は。ん、俺のアパートか?」
「一応、そうなるけど…」
「行ってもしょうがないから、警察?」
「何で警察!?」
「アパートの次は警察だったでしょ?」
「そうだけど…。じゃあ、次は大使館?」
「そう。よく覚えてるね」
「滝沢くんこそ。それに、結構、衝撃的な出来事だったもん、滝沢くんと逢ったときから…」
「まあ、そりゃそうか。全裸だったしね、俺。あはは」
「笑い事じゃないよ。本当にビックリしたんだから」
「うん、そうだよな。じゃあさ、とりあえず腹ごしらえ、どう?」
「もうそんな時間?」
「意外とね。咲が大丈夫なら、もう少し後でもいいけど」
「…ううん。食べちゃおうか。お腹減ったし、たぶん移動するよね」
「あぁ。じゃ、行こうか」
「どこかお店、知ってるの?」
「いや?」
迷いなく進んでいく滝沢のあっけらかんとした答えに、咲はおかしそうに吹き出した。
滝沢もつられるように笑って、二人は手を繋ぎ、冬空の下を歩いていく。
それは出逢った場所から新しく始まる、滝沢と咲の、ずっと続く物語。
■END
いつぞやの携帯メモ、没ネタ。シリーズにしようとして止めたお話です。
これ以上の話が思いつかなくて、おやすみなさいしていたネタなんですが、急に書きたくなったので読みきりとして執筆してみました。
読みきりでよかった。うん、これはシリーズ化する必要がない。書いたら満足したので、よしとしましょう(笑)
タイトルは『スタートラベル』と読んでやってください。『start』と『travel』くっつけただけです。
始まりの場所から始まるよって空気が伝わっていれば幸いです。
とか言いつつ、そこまで意識して書いてないので、伝わってないかもしれません。(汗)
咲ちゃんは結婚しても『滝沢くん』が暫く抜けないんじゃないかな…。
今回はまた一段と未来に飛んだご都合主義な捏造でした。
やったらFirefoxが重たいねどうしたの今日!? CPUが可哀想なことになってるよ!
ていうか怖いからやめて。消えたら泣いちゃうよ、哀華さん。
あ…またやってしまった…! 優先順位⇒睡眠時間<妄想時間。何かが間違っている。(笑)
ガッコでマウス&キーボードをGET。よし、マウスきた。とりあえずハードは揃った。ソフトはまだ落としてない。でも結局、作業には入れない…今はまだ。準備だけはそれなりに。
それでは、金曜日。哀華さんは、仲良くしましょー会に出席して帰りが遅いので、更新ないかもです。ごめんなさい。
お付き合いありがとうございます。
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真冬の空の下、冷たい風が吹く。マフラーに顔を埋めた咲が、どこか遠くを見る眼差しで、ちいさな息を吐いた。
まるで溜め息のようなそれは、けれど焦がれる乙女のごとき様子で、隣に立っていた滝沢は気になって身を寄せた。
触れ合うように腕がぶつかって、咲が顔を上げる。
「ごめんね滝沢くん、寄り道しちゃって」
「いいよ? 今日はぶらぶらしようって空けてたんだしさ」
「うん…」
こくりと頷いて、咲は再び、柵の向こうのホワイトハウスへ目を移す。
彼女が何を考えているのか、詳しいことは滝沢には分からない。
「…なんだか、遠い昔みたい。昨日のことみたいに思い出せるのに」
おかしいね、と懐かしむ瞳はやはり遠い過去を見ている。もう戻ってこないその日に、彼女が何を願うのか。
触れ合ったままの肩をもっと寄せるようにして、滝沢はポケットの中に沈んでいた咲の手を掴んだ。
目を丸くして、咲は滝沢の横顔を見つめる。
「世界にとったら、ここは世界の中心なのかもしれないけどさ」
きょとり、咲は小首をかしげる。
滝沢の言わんとしていることが、よく分からない。
「俺にとっての、世界の中心」
「え?」
「わかんない?」
掴んだ咲の手を引いて、にっと笑う。覗いた白い歯と弾む声に、すこし遅れて意味を察した。
「何それ…」
「咲が居なきゃ廻んない世界なんだよ」
気恥ずかしくて俯いた咲に笑って、滝沢はそう言った。
うそでも嬉しい。彼にとっては、嘘ではないのだろうけれど。でも現実的に考えれば、咲が居なくても世界は廻り続けるし、彼にとっての世界もまた動き続けるだろう。
だから、彼の言うことは、嘘ではないけれど、完全な真実でもない。それは限りなく真実に近い薄れた嘘。
掴まれた手はすこし暖かい。咲は冷え込んでいる自分の手を知る。
求めるように指先を動かすと、滝沢は躊躇うことなく咲の指先に自らの指を絡めた。
繋いだ手に胸から溢れ出しそうな気持ちを閉じ込めて、咲が呟く。
「滝沢くん、ズルイ」
「なんで?」
「…ううん。ありがと」
「どういたしまして。何もしてないけど?」
顔を覗き込むようにして、滝沢が言う。
それは咲が何に対して礼を述べたのか、明らかに理解している様子だ。
ぷうっと頬を膨らませ、咲が可愛らしく滝沢をにらむ。
「滝沢くん…分かっててやってる、よね?」
「んー? ていうかさ、」
「…あ、」
はぐらかすつもりか否かは分からないが、滝沢は繋いだ手を引いて、歩き始める。
急に歩き出した滝沢に慌てて続く咲は、よろけそうになりながら、滝沢にそれを支えられる。
どうしたの、と視線を向ける咲に視線を合わせないまま、滝沢は空を仰いで答える。
「いつまで“滝沢くん”なの?」
「…、え?」
「咲も“滝沢”なのに」
「た、…滝沢くん……!?」
「照れなくてもいいでしょ?」
顔、真っ赤だよ? 振り向いた彼はあっさりとそう言って、きらきら光る瞳で笑った。
「一応、新婚旅行だし」
「う、…うん、それは、その。……そうなんだけど。
…ごめんね、あの…なんか、滝沢くんで慣れちゃってるから、恥ずかしいの。名前呼ぶの。…おかしいよね」
「あぁ、ごめん。真に受けないでいいよ、咲が呼んでくれるなら俺は今のままでもいいから」
「ほんと?」
「勿論。…この名前は、咲がくれたようなもんだし」
「え?」
「んーん。何でもない。さて、ホワイトハウスはそろそろ終わりにして、次、何処行く?」
「うーんと…」
「俺と咲が出逢った場所の次…は。ん、俺のアパートか?」
「一応、そうなるけど…」
「行ってもしょうがないから、警察?」
「何で警察!?」
「アパートの次は警察だったでしょ?」
「そうだけど…。じゃあ、次は大使館?」
「そう。よく覚えてるね」
「滝沢くんこそ。それに、結構、衝撃的な出来事だったもん、滝沢くんと逢ったときから…」
「まあ、そりゃそうか。全裸だったしね、俺。あはは」
「笑い事じゃないよ。本当にビックリしたんだから」
「うん、そうだよな。じゃあさ、とりあえず腹ごしらえ、どう?」
「もうそんな時間?」
「意外とね。咲が大丈夫なら、もう少し後でもいいけど」
「…ううん。食べちゃおうか。お腹減ったし、たぶん移動するよね」
「あぁ。じゃ、行こうか」
「どこかお店、知ってるの?」
「いや?」
迷いなく進んでいく滝沢のあっけらかんとした答えに、咲はおかしそうに吹き出した。
滝沢もつられるように笑って、二人は手を繋ぎ、冬空の下を歩いていく。
それは出逢った場所から新しく始まる、滝沢と咲の、ずっと続く物語。
■END
いつぞやの携帯メモ、没ネタ。シリーズにしようとして止めたお話です。
これ以上の話が思いつかなくて、おやすみなさいしていたネタなんですが、急に書きたくなったので読みきりとして執筆してみました。
読みきりでよかった。うん、これはシリーズ化する必要がない。書いたら満足したので、よしとしましょう(笑)
タイトルは『スタートラベル』と読んでやってください。『start』と『travel』くっつけただけです。
始まりの場所から始まるよって空気が伝わっていれば幸いです。
とか言いつつ、そこまで意識して書いてないので、伝わってないかもしれません。(汗)
咲ちゃんは結婚しても『滝沢くん』が暫く抜けないんじゃないかな…。
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やったらFirefoxが重たいねどうしたの今日!? CPUが可哀想なことになってるよ!
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あ…またやってしまった…! 優先順位⇒睡眠時間<妄想時間。何かが間違っている。(笑)
ガッコでマウス&キーボードをGET。よし、マウスきた。とりあえずハードは揃った。ソフトはまだ落としてない。でも結局、作業には入れない…今はまだ。準備だけはそれなりに。
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