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エデンに響き渡るのは、焦がれた声。
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■東のエデン/滝咲、ジュイス
※劇場版Ⅱの後(ED後)のお話です。ご注意ください。

ご覧になる方は、「つづきを読む」からお願いします

選んだ憧憬の中に確かな温もりを探して



「ね、滝沢くん」
「ん?」

ぱたり、とノブレス携帯を閉じた彼に、咲は声をかける。
ぱちり、と瞬きを一つしてから、ちょこん、と首を傾げて。

「ジュイスって、その…どういう感じなの?」

咲の質問は、なんというか的を外していた。
彼女もジュイスが人間ではなくAIだと知っているから、何と問えばいいのか分からなかったのだろう。
それでも、なんとなく、訊かれていることは分かった。
滝沢はすこしだけ考えてから、小さく笑う。

「話してみる?」
「え?」

説明するよりも会話してもらった方が早いと判断した滝沢は、悪戯っぽく言ってからジュイスを呼び出した。
咲は動揺したが、まさか断ることもできず、彼が耳にノブレス携帯を当てるのを見守るしかない。
指紋認証を採用しているが故に、他者には使用できないノブレス携帯─── 持ち主であるセレソンの許可なくして、セレソン以外の人間はジュイスとコンタクトをとることは不可能だ。
そもそもセレソンを除いて、ジュイスと連絡を取ろうとする人間が稀というよりも想定外かもしれない。

ジュイスとは、一体どのようなAIなのだろうか?
セレソン・ゲームに導いたのはジュイスではないが、滝沢の王様申請を通したのは彼女だ。
彼の申請とはいえ、記憶を消す手助けを、その後押しをしたのは彼女だ。
そう考えると、正直なところ、複雑な面もある。
けれどもセレソンゲームがなければ、恐らく滝沢と出逢うことも、なかった。
益々複雑そうに、咲は唇を結んだ。

「…ああ、ジュイス。ちょっと君と話してみたいって子がいるんだけど。
 いや? あぁ、そう。よく分かったね。うん。ひとりだけ、信じてくれた子だよ」

滝沢はすこし声量を下げると、す、と目を細めた。
なにかを思い出すような遠い眼差しは、どこか切なそうだ。

訝しげに瞬いた咲の視線に気が付くと、柔らかく笑んで、ノブレス携帯を差し出す。
戸惑いながら受け取ったノブレス携帯を、咲はそぉっと耳へ当てた。

「…もしもし?」
『はい、ジュイスです。あなたが、No.09のお姫様ですか?』
「えっ!?」

全く予想していなかった質問に、咲は思わず声を大きくした。
滝沢は不思議そうに首を傾げて、黒い瞳で咲を見つめる。

(No.09って、滝沢くんのことだよね…。No.09のお姫様って、なに?)

目を丸くした咲は、滝沢の視線から逃れるようにそっぽを向いた。
滝沢はきょとりとした顔になるが、咲の様子を見て静かに立ち上がる。
ぽん、と咲の頭を軽く撫でてから、『ちょっと席を外すよ』と笑って背を向けた。
気遣ってくれたのだと思う。咲はほっとする反面、申し訳ない気持ちもあった。

と、ノブレス携帯から機械らしいと言えば機械らしいが、とても機械とは思えない感情豊かな声が聴こえる。

『残念ながらNo.09はこの国の王様にはなれませんでしたが、信じてくれた子の王子様にならなりたいと仰っておりましたので。お姫様、では不満でしょうか?』
「え、え…? それ……って、私のこと、なん、ですか?」
『ジュイスには、あなた以外に該当者が居ないように思われます。呼び方は、このままでも?』
「それはちょっと、流石に恥ずかしいかも…」
『そうですか。残念です』
「あ…ごめんなさい。普通に、呼んでくれれば…」
『普通に、と、申しますと?』
「あ…、ええと。咲でいいです』
『分かりました。ところで、ジュイスにどのようなご用件が?』
「少し…あなたと話がしてみたくて。私の知らない滝沢くんのことを、ジュイスは知ってる…から」
『No.09のことでしたら、ジュイスよりもあなたの方がよくご存知かと思いますが?』
「……ううん。そうかもしれないけど、…私は滝沢くんと出逢う前の彼を知らないから」
『あなたは、No.09の過去を知りたいのですか』

問われて、咲は言葉に詰まる。
彼の過去が気にならないと言えば嘘になってしまうけれど、過去を知ったところで何がどう変わるのだろう。
そもそも彼は、自身の過去をあまり語らない。
訊かないから、だけかもしれないが、なんとなく訊けずにいる。はぐらかされる気がして。
もしかするとその反応は、単に知られたくない何かがあるだけ、ではないのかもしれない。
お人よしの彼のことだから、知らなくてもいい何かを隠しているだけなのかもしれない。

過去を詮索するのは、やめたほうがいい。

今更そう思って、咲は緩く首を振った。

「…ううん。ごめんなさい、違うの。私は、滝沢くんの過去を知りたいわけじゃなくて」
『はい』
「─── 滝沢くんにとって、ジュイスがどういった存在なのか、知りたかったの」

絞り出すように、声を落とす。
彼にとって、セレソン・ゲームとは、どういったものだったのか。
ほかのセレソンさえも助けようとしていた節のある彼が信じるジュイスが、どういう相手なのか。

緊張に身を硬くした咲の様子を知らないジュイスは、答えに窮することもない。

『ジュイスはNo.09のコンシェルジュです。救世主たらんとするNo.09の望むまま、今後も最大限の手助けをさせていただきます』

─── それにはあなたも必要不可欠でしょう。

続けられたその一言に、驚く。
なんて柔らかな、朗らかな声で答えるのだろう。
ジュイスがどういった経緯を経て、その結論に達したのか、咲には知るよしもないけれど、耳に届く声がとても優しかった。
知らず、咲は微笑を浮かべていた。とても嬉しそうに。

「─── ジュイス」
『はい』
「ありがとう。滝沢くんのジュイスが、あなたでよかった」
『ジュイスもあなたがNo.09の…いえ、タブーでしたね。今はまだ』
「…ジュイス?」
『では、今後も健闘をお祈りしつつ、あなたがNo.09のパートナーたらんことを』

ノブレス携帯越しに、微笑する気配。
AIが微笑するのか、とか、するとしてもそうする必要があるのか、とか、そういった疑問は全く頭に浮かばない。
たぶん、ジュイスが直前で言わなかったのは、先ほど取り下げてもらった呼び方、即ち『お姫様』なのだろう。

ジュイスとの電話が切れたことを知ると、咲は妙にドキドキしながら耳からのブレス携帯を話した。
ディスプレイはいつもの画面に戻っている。
ゆっくりとノブレス携帯を閉じて、ソファに座り込む。身体を沈めて、目を閉じてみる。

ゆっくりと、ジュイスとの会話を反芻する。
想像していたよりも、もっとずっと感情豊かなジュイスは、本気か冗談か判別がつなかいけれど、たぶん自分のことを認めて、歓迎してくれている。
今まで複雑な気持ちを抱いていたことが、申し訳ないと思ってしまうくらい、晴れやかな気持ちになってしまった自分に、ほんの少し苦笑い。

そして引っかかる、キーワード。王子様とお姫様。

「…王子様、って」

そろりと目を開けると、いつの間に戻ってきていたのか、滝沢がひょこりと顔を出した。
後ろから覗き込まれて、吐息がかかるほどに近い。心臓が飛び出しそうになり、咲は不自然に硬直した。

「なに、王子様って?」
「え、と…っ!」

あわあわしながら、咲はノブレス携帯をぎゅっと握った。
滝沢は顔を引っ込めて回り込むと、咲の隣に腰を下ろす。
なんと答えればいいのか分からないまま、咲は『ありがとう』とノブレス携帯を渡した。
受け取った滝沢は、ポケットにノブレス携帯を突っ込んで、ちらりと咲を横目で見やる。
赤い顔をしていた咲は、惚けた様子で滝沢を見ていたが、視線が合うとさっと反対側を向いた。

どんな会話をしたのかは、よく分からないけれど。
王子様、というキーワードと、赤い顔の彼女を見て、なんとなく察する。
少しばかり照れくさい気もするけれど、ジュイスが咲に伝えたであろうことは、たぶん間違いはない筈だから。

「咲、」

手を伸ばす。
手に触れる。
細い指先がぴくりと震えて、そっぽを向いていた顔がそろりと振り返った。

「ジュイスと何、話してたの?」
「え、っ…? それは……その、」
「ねえ、お姫様?」
「あの…、え? ……! た、滝沢くん、何で知ってるの!? もしかして、聴いてたの?」
「ううん。聴いてないけど?」
「じゃあ、なんで…!」
「だって、ジュイスにその話をしたのは俺だからね」
「…ぁ、う……」
「ごめん。そんな話するなんて、ちょっと予想外だった。でも、」
「……っ」

澄んだ色の黒瞳が、咲を見据えて、きらりと瞬く。

「咲が俺のお姫様っていうのは、本当だよ」

満面の笑みと、胸の深いところに届く、優しい声。
御伽噺の中にあるハッピーエンドを信じて疑わない(それを手にできると信じているような)眼差しが、そこにある。
眩暈すら覚えそうになって、咲は無意識に、滝沢の手を握り返した。

ふ、と笑みを優しくした滝沢が、顔を近付けて来る。
キスを迫られているんだと理解して、咲の体温も鼓動の速度も、ぐんと上がる。
絡めたままの指先をなぞった滝沢の指に抗うことなどできないまま、瞼を閉じて、咲は口に出せない想いが伝わるようにと祈った。

■END

ものっそ久しぶりに書いた気がします。

ジュイスと咲ちゃんの組み合わせを書きたかっただけです。
でもやっぱり滝沢くんと絡んでほしくてこうなりました。

咲ちゃんはジュイスのことをどう思っているのでしょう。
快く思わない部分も、少なからずあったのではないかなあ、なんて。
話せばそれは消えると思うんですが…。
そんな哀華さん妄想です。

お付き合い、ありがとうございました!

(ところで今日やたらとblog更新してますね。ま、イベントレポ等々でお話はこれだけですが。。。)

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大好きです…なんていうか、その…崇めてもよろしいでしょうか!!!!???
しおり 2010/08/28(Sat)03:23:12 編集
しおりさんへ
こんばんは、目を通してもらって嬉しいです^^

そ、そんなに私、すごい人ではないですよ!
崇めてもらえるほどの人間じゃないので(崇められたらどうすればいいか分かりません…)(笑)
こうしてコメントいただいたり、拍手ぱちぱちしていただくと、すごく元気が出ますので、今後ともお付き合いいただければ嬉しいです~^^
どうもありがとうございます!
哀華  【2010/08/30 23:20】
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