■東のエデン/滝咲
※劇場版Ⅰ/The King of Edenのお話です。ご注意ください。
ご覧になる方は、「つづきを読む」からお願いします。
※劇場版Ⅰ/The King of Edenのお話です。ご注意ください。
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蘇らない記憶の中に、
シートに身を沈め、意識をまどろみの中からふと覚醒させた滝沢は、何度か瞬いてからそっと状況を確認した。自室ではない。身体が強張っている。シートで眠っていたせいか。
見たことのある、寧ろ見慣れた劇場内に視線を巡らせ、最後に少女へ目を向ける。
日本からわざわざ自分を探しに来た女の子と逢って、狙われていると知り、その子と部屋から逃げ出した。
あぁ、と滝沢は薄暗い劇場を眺めて納得する。
隠れ場所を求めて、バイト先であるアンジェリカ・フィルムセンターに逃げ込んだのだ。
眠りに落ちてどれくらいが経ったのか、よく分からない。有事に備え、眠ってしまうつもりはなかったのだけれど、余程疲れていたのか、或いは─── 自分でも意識せずに気を抜いてしまったのかもしれない。
静かに左隣へ視線を移すと、こくり、と女の子が頭を揺らしていた。閉じられた瞼と長い睫毛にそっとちいさな笑みを送って、滝沢はブランケットを彼女にかけてやることにした。
女の子が微かに身動ぎする。冷房はそこまで強くはないのだが、彼女の場合、格好が格好だ。肩から胸元にブランケットをかけ、すっと伸びた素足を隠すように覆ってやる。
シートに身を預け、眠っている女の子を起こさないよう、席を立つ。
喉が渇いた彼は、ポケットの小銭を確認しながら物音を立てぬよう劇場を出て行った。
雨音が聴こえる。薄暗いのは天気のせいらしく、胸に染み込んでくるようなシトシトとしたリズムを、ぼんやりと耳に入れる。
自動販売機でドリンクを購入し、劇場へ戻ろうと踵を返す。
女の子の分と自分の分のそれを両手に、滝沢はゆっくりと視線を上へ向けた。
曖昧だった半年間の生活の中に、飛び込んできた確かなもの。
自分の過去の片鱗を持って現れた彼女は、果たして自分をどんな運命へ導くのか。
日本へ帰国するのは危険な状態らしいが、ニューヨークに潜伏するのも安全とは言いがたい。寧ろ、彼女の友人であり過去の自分の仲間とも言えるらしい、彼等のいる日本へ戻った方がいいのかもしれない。
彼女の話には、納得できることが幾つもあるけれど。
肝心の記憶が戻らず、なかなか実感は湧かない。
彼は、それがもどかしかった。ふう、と小さな息を吐き、視線を足元に落とす。
彼女の、不安そうな瞳、怯えるような声、なにかを訴えてくる温もりが、やけに胸に残って離れない。すこしだけ戸惑いはあったが、不思議とそれだけで、あっさりと彼女を受け入れている自分がいる。ここへ来る時だって、自然と手を引いて走っていたし、シートをすすめた時も、無意識のうちに肩を抱いていた。いや、後者を無意識と表現するのは、語弊がある。肩を抱きたかったからそうしたのだ。理由は、分からないままだけど、そうしたかった。
彼女の悲しい瞳を見ていると、言いようのない感情が胸を掻き乱す。
だから、思い出したかった。半年前に、失われてしまった過去を。
きぃぃい。
そんなことを考えていると、重たい扉が開いて、彼女が現れた。
赤いバッグまで肩に下げて、大きな瞳がなにかを探している。
「どうした?」
「…滝沢くん、」
ドアノブに手をかけた彼女は、こちらの姿を見付けると、泣きそうな色を見せる。
ああ、と彼は心中を察する。からかうような笑みを浮かべ、彼女へ紙コップを差し出しながら、
「居なくなったと思った?」
そんな風に問いかけると、彼女は言葉に詰まり、無言で受け取った紙コップに口をつけた。
照れ隠しの為にそうしたのだろう。逃れるように視線を巡らせ、目に留まったポスターに狙いを定めると、彼女はくるり、背を向ける。
ほのかに色付いた頬を見て、彼は安堵したように笑っていた。
─── 蘇らない記憶の中に、君は居たんでしょ?
彼女の話を信じられる、信じていたいと思っている自分に気が付いて、彼は『まいったな』とちいさく俯いた。
どうやら、過去に途切れた胸の疼きの正体に、見当がついたらしい。
思い出せないまま、遠い過去を懐かしむように目を細め、まだ名前も知らない女の子へ、密やかに、とくりと胸を高鳴らせた。
■END
気分が乗らなかったので、劇場版Ⅰを見て泣いてきました。というわけで、今更、劇場版Ⅰネタです。
エデンの為だけにあるPS3をセットし、ヘッドフォン装着、準備OK、まずは特典映像、予告編諸々からだ。そこで既に泣く(※予告映像とかなので、一分とか一分半とか、それくらいしか時間的にはないんですけど…好き過ぎてダメでした)。TVシリーズの最終話とか好きすぎるからダメぇえぇえぇええええ(´;ω;`)ぶわっ
特典映像を楽しみ、本編に突入。も・ち・ろ・ん。紙とペン、用意してあります。
劇場版Ⅰは劇場へ三回しか行ってないので、自宅で見たのあわせてトータルようやく六回目です。(劇場版Ⅱの方が見た回数多いとか。笑)
そして気が付いたことがあったり。新発見!! メモ用意しておいて正解だよ、哀華さん!
このネタは、新発見じゃなくて、見ていて書きたくなったネタなのです。なので新発見はまた後日。
ていうか、六回目にしてようやく気が付いた私、バカかしら。(笑)
いやーんもう、神山監督ありがとうvv 何度でも楽しめます。物語のほうも、滝咲のほうもvv
劇場版Ⅰは再会からずっと滝咲のターンで嬉しいです。咲ちゃん視点で物語が進んでいくシーンが多いのですが、滝沢くんも咲ちゃんのこと考えてる筈です。描かれてはいないけど、滝沢くんにとって、咲ちゃんは大事な子なんだと感じたからこその、彼の言動だとおもう。
滝沢くん→咲ちゃん。が、伝わっていると嬉しいです。
気分が乗らないなんて、どの口が言ったのかしら…(にかー)
もう、いろいろあるよ、書きたいこと。先日マルチタスク対応し、四件のタスク(ネタ)が処理中なのに、めでたく五件目が追加されました。マルチタスク、インプットには対応してるんだけど、アウトプットには対応してないのよ。だって出力できるデバイスは一個だけだから。(それマルチタスク対応できてないんじゃ!爆)
書きたいけどもう…夜!! 更新はできないかもですが、妄想はします。
稚拙なお話へのお付き合い、どうもありがとうございます。
シートに身を沈め、意識をまどろみの中からふと覚醒させた滝沢は、何度か瞬いてからそっと状況を確認した。自室ではない。身体が強張っている。シートで眠っていたせいか。
見たことのある、寧ろ見慣れた劇場内に視線を巡らせ、最後に少女へ目を向ける。
日本からわざわざ自分を探しに来た女の子と逢って、狙われていると知り、その子と部屋から逃げ出した。
あぁ、と滝沢は薄暗い劇場を眺めて納得する。
隠れ場所を求めて、バイト先であるアンジェリカ・フィルムセンターに逃げ込んだのだ。
眠りに落ちてどれくらいが経ったのか、よく分からない。有事に備え、眠ってしまうつもりはなかったのだけれど、余程疲れていたのか、或いは─── 自分でも意識せずに気を抜いてしまったのかもしれない。
静かに左隣へ視線を移すと、こくり、と女の子が頭を揺らしていた。閉じられた瞼と長い睫毛にそっとちいさな笑みを送って、滝沢はブランケットを彼女にかけてやることにした。
女の子が微かに身動ぎする。冷房はそこまで強くはないのだが、彼女の場合、格好が格好だ。肩から胸元にブランケットをかけ、すっと伸びた素足を隠すように覆ってやる。
シートに身を預け、眠っている女の子を起こさないよう、席を立つ。
喉が渇いた彼は、ポケットの小銭を確認しながら物音を立てぬよう劇場を出て行った。
雨音が聴こえる。薄暗いのは天気のせいらしく、胸に染み込んでくるようなシトシトとしたリズムを、ぼんやりと耳に入れる。
自動販売機でドリンクを購入し、劇場へ戻ろうと踵を返す。
女の子の分と自分の分のそれを両手に、滝沢はゆっくりと視線を上へ向けた。
曖昧だった半年間の生活の中に、飛び込んできた確かなもの。
自分の過去の片鱗を持って現れた彼女は、果たして自分をどんな運命へ導くのか。
日本へ帰国するのは危険な状態らしいが、ニューヨークに潜伏するのも安全とは言いがたい。寧ろ、彼女の友人であり過去の自分の仲間とも言えるらしい、彼等のいる日本へ戻った方がいいのかもしれない。
彼女の話には、納得できることが幾つもあるけれど。
肝心の記憶が戻らず、なかなか実感は湧かない。
彼は、それがもどかしかった。ふう、と小さな息を吐き、視線を足元に落とす。
彼女の、不安そうな瞳、怯えるような声、なにかを訴えてくる温もりが、やけに胸に残って離れない。すこしだけ戸惑いはあったが、不思議とそれだけで、あっさりと彼女を受け入れている自分がいる。ここへ来る時だって、自然と手を引いて走っていたし、シートをすすめた時も、無意識のうちに肩を抱いていた。いや、後者を無意識と表現するのは、語弊がある。肩を抱きたかったからそうしたのだ。理由は、分からないままだけど、そうしたかった。
彼女の悲しい瞳を見ていると、言いようのない感情が胸を掻き乱す。
だから、思い出したかった。半年前に、失われてしまった過去を。
きぃぃい。
そんなことを考えていると、重たい扉が開いて、彼女が現れた。
赤いバッグまで肩に下げて、大きな瞳がなにかを探している。
「どうした?」
「…滝沢くん、」
ドアノブに手をかけた彼女は、こちらの姿を見付けると、泣きそうな色を見せる。
ああ、と彼は心中を察する。からかうような笑みを浮かべ、彼女へ紙コップを差し出しながら、
「居なくなったと思った?」
そんな風に問いかけると、彼女は言葉に詰まり、無言で受け取った紙コップに口をつけた。
照れ隠しの為にそうしたのだろう。逃れるように視線を巡らせ、目に留まったポスターに狙いを定めると、彼女はくるり、背を向ける。
ほのかに色付いた頬を見て、彼は安堵したように笑っていた。
─── 蘇らない記憶の中に、君は居たんでしょ?
彼女の話を信じられる、信じていたいと思っている自分に気が付いて、彼は『まいったな』とちいさく俯いた。
どうやら、過去に途切れた胸の疼きの正体に、見当がついたらしい。
思い出せないまま、遠い過去を懐かしむように目を細め、まだ名前も知らない女の子へ、密やかに、とくりと胸を高鳴らせた。
■END
気分が乗らなかったので、劇場版Ⅰを見て泣いてきました。というわけで、今更、劇場版Ⅰネタです。
エデンの為だけにあるPS3をセットし、ヘッドフォン装着、準備OK、まずは特典映像、予告編諸々からだ。そこで既に泣く(※予告映像とかなので、一分とか一分半とか、それくらいしか時間的にはないんですけど…好き過ぎてダメでした)。TVシリーズの最終話とか好きすぎるからダメぇえぇえぇええええ(´;ω;`)ぶわっ
特典映像を楽しみ、本編に突入。も・ち・ろ・ん。紙とペン、用意してあります。
劇場版Ⅰは劇場へ三回しか行ってないので、自宅で見たのあわせてトータルようやく六回目です。(劇場版Ⅱの方が見た回数多いとか。笑)
そして気が付いたことがあったり。新発見!! メモ用意しておいて正解だよ、哀華さん!
このネタは、新発見じゃなくて、見ていて書きたくなったネタなのです。なので新発見はまた後日。
ていうか、六回目にしてようやく気が付いた私、バカかしら。(笑)
いやーんもう、神山監督ありがとうvv 何度でも楽しめます。物語のほうも、滝咲のほうもvv
劇場版Ⅰは再会からずっと滝咲のターンで嬉しいです。咲ちゃん視点で物語が進んでいくシーンが多いのですが、滝沢くんも咲ちゃんのこと考えてる筈です。描かれてはいないけど、滝沢くんにとって、咲ちゃんは大事な子なんだと感じたからこその、彼の言動だとおもう。
滝沢くん→咲ちゃん。が、伝わっていると嬉しいです。
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