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エデンに響き渡るのは、焦がれた声。
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■TOS(原作)/シルヴァラント編/ロイコレ

ご覧になる方は「つづきを読む」からお願い致します。




ひとつひとつ欠けていく大切なものを拾い集めて繋ぎ止めて、君の代わりに抱き締めてあげたかった。


Close to me…


何もできないことが悔しいと、痛感する。どんなに強くなっても、俺はコレットを守れないのかもしれない。強くなるだけじゃ、ダメなのかもしれない。
再生の旅に同行してから暫く経ち、そう考えるようになったけれど、今のコレットを見ていると、そうなんだろうとしか思えない。焦りがロイドの胸を刺す。

隣を歩くコレットは前を向いていて、いつもと変わらないように見えるけれど、彼女は既に多くのものを失っている。(ある意味、その命を失い続けていると、ロイドは知らない。“神子”の宿命を知らぬが故に。)
つい昨日も、彼女はまたひとつ人間としての機能を奪われた。救いの塔への道を開く最後の試練だったそれは、彼女の声を奪い去った。

聴こえる筈の声が聴こえない現実は、どこか嘘っぽくて覚束ない。
信じたくないだけだと言われてしまえばそれまでだろうが、どうしてコレットが、と考えてしまう自分がいる。
“神子”だから。恐らくそれが世界中の答えだ。
ロイドにとってもコレットは“神子”なのかもしれないが、それだけでは有り得ない。彼にとって彼女は“神子”である、と締めるなら大きな間違いだ。
理由は、ロイドにとってあくまでも彼女はコレットという名前の女の子だからだ。たった十六歳、ひとつ年下の女の子、大切な幼馴染。
世界中の誰もが知らないコレットという女の子のことを、ロイドは知っている。沢山、知っている。

コレット、と唇が動く。
でも、乾ききった喉から絞り出した声は、声にもならなかった。
なのに、コレットは窺うようにそうっと視線を向けて。


『ロイド?』


自然、彼女の唇はひとつの名を紡いだ。
無意識に、声が出ないのだという残酷な現実さえ忘れて、或いは塗り替えて、彼を呼ぶ。
彼女のそれこそ声にならなかったけれど、確かにロイドには分かった。呼ばれたことが分かったから、言葉に詰まる。
どうして彼女はこんなにも強いのだろう、何で気付かれてしまうのだろう、その胸の隙間を埋めたいと思っているのは俺の筈なのに。
聴こえない声に胸が痛む、それでも隙間は少しだけ満たされた。

ロイドはくしゃりと歪めた表情を隠して、何でもないと首を振った。
心配をかけてどうする、と自分を叱咤するけれど、コレットの視線は変わらない。
ちらりと目を向けると、心配そうな眼差しがそこにあった。思わず苦笑いをする。


『ロイド』


また、声が出ないのに彼女はロイドを呼ぶ。
二回目の呼びかけにようやくそれを思い出したかのようにハッとして、コレットは悲しそうな色をその瞳に浮かべた。
聴こえないのに、呼ぶ。呼んでくれた。彼女にとってそれはあまりにも自然なことだったのだ。
それが嬉しくて、切ない。自分を呼んでくれる彼女になんとか応えてやりたい。彼女が望むのは世界再生、ならこの旅を終わらせてコレットから失われたすべてのものを取り戻してやりたいとロイドは思う。

天使となってしまっても、逢えないわけじゃないと信じていた。

だから、ロイドは精一杯に笑った。
コレットに心配かけないように、彼女の心に雨が降らないように。


「コレット。俺のこと、呼んだよな?」
『…! …うん』


小さく呟くと、彼女は一瞬目を丸くし、唇を震わせると深く頷いた。
項垂れるようになった彼女に、今度は心から笑って、ロイドはそっと手を伸ばす。
頭を撫でてやると、コレットの肩から力が抜けた。


「ありがとうな」


聴こえなくても伝わってる。
例え呼び声なんてなくても分かる。
でも、やっぱりコレットの声で呼んでほしい。その声が聴きたい。
柔らかくて優しい、陽だまりのような温かさに包まれたい。胸がくるしい、とロイドは息を吐いたけれど、俯いたままのコレットにそれを悟られた様子がないので、ほっとした。
何度も繰り返し頭を撫でていると、ロイドは気が付いてしまった。


(泣いてる、みたいだ)


涙なんてとうに出ないのに、目を伏せてただロイドに頭を撫でられている少女は、泣き方を知らない子どものようだった。
強くなるだけでは足りない。コレットを守るには、どうすればいい?

二つの世界を救う方法、コレットを救う方法。
諦めたくはない。ロイドは、救いの塔を睨むように見上げる。


『ごめんね、ロイド』


聴こえない声で紡がれたSOSを、ロイドはまだ、知らない。


■END

ちょっと前ですがゲームをリプレイしてたら、マナの守護塔をクリアしてコレットが声を失いました。
衝撃的すぎて、こんなネタ(ロイ→←コレ)ばかり浮かびます。ラブイチャも書きたいけど。
タイトルの意味は『私の傍に』。縋ってばかりじゃいられないけど、前を向いて歩く為に必要なのはやっぱり、唯一のあなた(君)だった。
ロイコレせつな過ぎる…。大好きだ。何度言っても足りない。



せっかくblogをよろず妄想部屋化したので、短文でもいいから思いついたら書こうね哀華さん。

病み上がりで明日から頑張れよー、って感じなのにもう日付変わって三十分という罠。でも書く。ロイコレを書かずに哀華さんが生きていけると思うなよ!(笑)
私からロイコレをとったら、私はただの…。……思いつかないくらい価値のないオタクになります。

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雑多妄想部屋。

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東のエデン/滝沢朗×森美咲
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