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エデンに響き渡るのは、焦がれた声。
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※この記事は劇場版Ⅰのネタバレを含みます。

先日(たぶん『2010年 女子アニメ雑誌』の記事で)ぼやいた『劇場版Ⅰ/逃避行ネタ』、誰にも頼まれてませんが無謀にも挑戦してみる。残念ながら続き物かもしれません。
書きたいものを書くだけなので何も考えていません=未完には定評のある哀華さんです。(…)
個人的な解釈および展開となりますので、整合性が取れなくなる可能性があります。
それでもよろしければお付き合いください。

ここを覗いてくれている方、拍手を押してくださる方、ありがとうございます。
こんな辺鄙なところでも見ていただいているのかと思うと、励まされます。ありがとう。
ノブレス・オブリージュ、どうか今後も当サイトの救世主たらんことを。


ふたつのエデン
───────────────────────────────────────

ぽつぽつと雨が降り頻る中、滝沢と咲は消えてしまった滝沢の過去の手がかりを探して、チェルシー地区の移動遊園地までやって来ていた。
使い込まれたメリーゴーランドを見上げ、白い馬に跨ろうとする咲を手伝い、滝沢は彼女の後ろに乗る。咲はやや照れくさそうに頬を赤らめたが、ごうん、と低い音がして動き始めたメリーゴーランドに意識を持っていかれた。
思いの外スピード感のある回転に最初は驚いた咲だったが、後ろに乗る滝沢がしっかりと身体を支えてくれたので、いささか恥ずかしくなると同時に安堵した。
くるりくるりと回るメリーゴーランドに乗りながら、ゴールデンリングについて話す。六十発のミサイル迎撃を果たしたあの日あの時、滝沢が零した言葉。日本にはゴールデンリングのついているメリーゴーランドが存在しないこと。だから海外を探したこと。
雨に濡れるのも構わずに、咲は『えいっ』と掛け声をひとつ放つと手を伸ばした。
夏の雨に濡れ、鈍く光るゴールデンリングに指先は触れもしない。

「取れなかったの?」

耳元に落ちてきた声は秘め事を囁くように低く、咲はとくんと胸が高鳴るのを自覚した。ふるりと首を振って、密かに息を吐く。
ぎゅっと握り締めた鉄の棒が、冷たくて心地良い。咲の動揺に気付かずに、滝沢は無言で何事かを考えていた。
やがて緩やかな音楽のフェードアウトと共に、メリーゴーランドは止まってしまう。

「え、もう終わり?」
「もう一回乗りなよ」
「…あ、……いつの間に」

手の中のゴールデンリングを咲へ見せてから、止まってしまったメリーゴーランドを下りようとする滝沢だったが、咲は無意識に彼へ手を伸ばしていた。白馬から下りかけた王子が持つゴールデンリングを求めるように触れた咲の指先に顔を向けると、自分でも吃驚したのか、不思議そうに、そして不安そうにこちらを見つめる瞳がそこにあった。
微笑んで、滝沢は体勢を整える。下りるのは止めた。
自分の行動のフォローしようがない咲は、何と言っていいのか分からずに俯く。そんな彼女を軽く抱き締めながら、滝沢は雨雲へ視線を向けた。
ごうん、と再びメリーゴーランドが動きだす。

「君のおかげで、ひとつ思い出せたことがあるよ」
「え? 本当?」

頬に飛んできた雨を指先で拭い、咲は後ろを振り返る。
滝沢はどこか遠い場所を見つめるような横顔のまま頷く。

「俺、ガキの頃ここに住んでた気がする…」

小さい頃、映画をよく見ていた。やることもなく、話し相手もいなかったから、仕方なく見ていた。だから映画は嫌いだった。
唯一、母親と一緒に観たのが『ダンボ』だ。それ以外は一人で見ていた。
だから遊園地に連れて行ってもらった時は嬉しくて、ずっとその時間が続くようにと一生懸命になった。
メリーゴーランドに乗り続けていられるように、ゴールデンリングへ手を伸ばす自分を、母親はベンチに座って見守っていた。

蘇ったおぼろげな記憶の一欠けらは、滝沢の胸に秘められたまま、詳細を咲に語ることはなかった。
遠くを見る滝沢から目を逸らし、咲は黙り込む。彼が言いたくないことを聞き出すつもりはない。
ただ、彼が思い出した記憶は今の彼にとって支えとなりえるのか? それが気がかりと言えば気がかりで、くるりくるりと回るメリーゴーランドに揺られて、咲の気持ちはぐらりと揺れる。

なんとか滝沢を救いたい。その思いを胸に、こんな所にまで来てしまった。
でも事態は急変して、どんどん滝沢を追い込んでいく。記憶を取り戻したところで、果たして滝沢はどうするのか。王様申請のその真意を、咲は勿論、誰も知らない。
セレソンである滝沢が、その答えを持っている。記憶を思い出しさえすれば、答えは分かるかもしれない。けれど咲は答えを知ることが怖かった。

滝沢が王様になってしまったら。ジュイスの計画が進んで総理大臣にでもなってしまったら。滝沢は益々多くのものを背負い込んで、きっと一人きりで戦ってしまいそうな気がした。
最初のミサイル攻撃から住民を救った英雄は、守ったつもりの彼等に裏切られて苦しんだ。それでも二万人の協力者の身を案じて、一人で悪者になった。沢山の裏切りに傷付きながらも立ち上がり、今度もまた悪役を演じて、彼は再び記憶を消した。
どうして記憶を消したのか咲には分からないし、滝沢 朗が最後にジュイスに申請した『俺をこの国の王様にしてくんない?』の意味もわからない。
彼の頭の中にはどういう筋書きがあって、その結論に至ったのか。想像もできなかった。

だから咲は、その答えを知ることが怖い。
想像もできないことだからこそ、突拍子もない考えで、滝沢はまた一人で全ての傷みを抱え込むつもりかもしれない。
助力を乞うことはあっても、自分が一番の貧乏くじを引くように仕向ける。仕方ないからと、彼はそれを選ぶのだ。躊躇いも戸惑いも抱え込んで、それでも目の前の誰かを助ける為にそうするのだろう。
優しすぎる彼はとても彼らしく、咲はそんな滝沢に惹かれているのだと思う。
傷だらけの王子様に、もうこれ以上傷付いて欲しくない。咲は、ぽつりと零していた。

「…王様になってどうするつもりなの、滝沢くん」

追っ手はセレソンだけではない。飯沼後援会も不審な動きを見せているようだ。
目まぐるしく押し寄せてくる現実に、咲は束の間忘れていた焦燥感を覚えた。もしかしたら、忘れていたかったのかもしれない。
滝沢との再会は咲にとって大きな前進だったが、滝沢にとって咲との再会、或いは過去の自分との直面は果たしてどんな意味を持つのだろうか。

底の見えない不安に駆られる咲の様子に気が付いたのか、滝沢がそっと咲の手を握った。
ハッと我に返った咲が後ろを振り向く前に、告げられる。


「このまま、二人で逃げちゃおうか」


悪戯っぽく甘いその声は咲の心臓を鷲掴みにし、どこか背徳を匂わせるその誘いに、咲はただ唾を飲んでゆっくりと後ろを振り返った。
滝沢の手を、そっと握り返して。


■END

書いてしまった。これが哀華さんの精一杯…。
か、神山監督、こんな感じで逃亡の幕開けでしょうか…(笑)

本当はセレソン(特にNo.6とNo.11)を絡ませたかったんですが、そこまでかけなかった。ごめんなさい。
滝咲が好きなので、やはり二人のシーンには自然と熱が入ってしまう…。
そして無駄に長くなるのですね。哀華さんの文章は冗長なのです、ええ、分かっているのですが(汗)

やや半端に思えるかもしれませんが、とりあえずはここまでで。
あとは気分と反応次第です。大体のところ、満足したので。(笑)
二人が逃亡にいたるまでが書きたかったのです。
まあ、逃亡後にも書きたいことはあるのだけれど…。
この滝咲のOK/NGは、読んでくださった方にジャッジを任せます。

目を通してくれてありがとうございます。
ノブレス・オブリージュ、今後も当サイトの救世主たらんことを。




そ、そして先ほど、尊敬する『東のエデン』テキストサイト様へ恐る恐るメッセージを送ってしまった…!
スーパーチキン哀華が自らコンタクトを取るのは珍しいのですが、どうしてもメッセージをお送りしたくて…。
…緊張です。…失礼がないようにしたつもりなのですが……(´・ω・`)
やっぱり、必要最低限の文で多くを表現できる方はすごいな、といつも思う。私には難しい、とても。

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哀華
性別:
非公開
雑多妄想部屋。

【 推奨CP 】
東のエデン/滝沢朗×森美咲
他/男女王道CP

【 好き 】
I've Soundが大好き。特にKOTOKOちゃんらぶ。
fripSide(第一期・第二期)も好きです。naoすき。
ダークトランス系がとてもすき。
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