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エデンに響き渡るのは、焦がれた声。
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■東のエデン/滝咲
※劇場版Ⅱの後(ED後)のお話です。ご注意ください。

ご覧になる方は、「つづきを読む」からお願いします。

君が光に変えていく



「滝沢くん」
「なに?」

ぴた、と急に距離を詰めてきた咲に視線を向けて、俺は首を傾げる。
絡まる腕に伝わってくる咲の柔らかさが心地良い。

どうしたの、と続けると、マフラーで隠した口がもごもごと何かを呟く。
身体をすり寄せて、じっと俺を見上げる咲は、なぜか不満そうだ。
ごめん、なんて言ったの? 分からなくて少し顔を寄せると、咲は色の薄くなった唇を動かす。

「何で、そんな薄着で寒くないの?」
「寒いよ?」
「…マフラーもしてないのに」
「ヒートテックだからね」
「寒いよ、絶対。だって雪降るって言ってたよ、天気予報」
「ふうん。そうなんだ。それは早く帰らないと困るね。傘ないし」
「夜、降るみたい。だから大丈夫だと思うけど…」
「そっか。帰るまでに降らなきゃいいね」

空を見上げると、厚い雲が覆っている。
雪が降る、と言われてようやく、吐いた息が真っ白だと知る。
咲の腕と絡めた腕をもっと深く絡めて、ポケットの中の手を奥へ突っ込む。
こういうのは、自覚すると余計に寒くなるっていうか。

「うー…、さむい」

あんまりにも咲がつらそうだったから、目に付いたファーストフード店に思わず足が向いた。
身体をあっためる為にコーンポタージュとホットココアを頼んで、二階の禁煙ゾーンへ向かう。

寒さからか、それとも半端な時間からか、俺達以外に客は居なかった。

「誰も居ない。なんか珍しいな…」
「立地が良くないから…ほら、ここ、人通り少ないし、駅とは反対だし」
「あぁ、なるほどね。でも、誰も居ないってのは、俺、初めてだよ」
「うん。私もそうかも。普通、学生とかいるのに」

コートを脱いでソファに腰掛けた咲が、ほっと一息つく。
人が居ないとはいえ流石に店内、暖房はそれなりに効いている。

「ラッキーって感じ?」
「え?」

咲が頼んだコーンポタージュを差し出すと、ありがとう、と両手で受け取った。
指先まで冷えてたのか、触れ合った手が冷たい。
きょとり、とした瞳を向けてくる咲に笑ってみせる。

「咲と二人っきりだから、なんとなく。ラッキーかなって」
「…! で、でも、別にそんな……、珍しくないよ」

かあっと赤くなる咲が、わたわたとしながら肯定とも否定ともつかない言葉で逃げる。
俯いた咲は目を合わせてくれない。ただ黙って、コーンポタージュが入った紙コップを両手で包んでいる。
俺は、こういう咲を見るのが楽しい。楽しくて、すごく安心して、温かい気持ちになる。
でもあんまりいじめるのも可哀想だから、別の話にしよう。

「咲って、コーンポタージュ好きなの?」
「え? あ、うん。わりとよく飲むよ。大学の自販機に、冬になると並んでね、いつも平澤くんが買ってきてたんだ」
「コーヒーじゃなくて?」
「うん。平澤くんね、コーンポタージュ好きなんだよ」
「へえ? なんか、イメージとちょっと違うな」
「滝沢くんは、好きな飲み物ってある?」
「俺? そうだなぁ…」

そんな、なんでもない雑談をしながら、頼んだ飲み物が空っぽになるまで笑ってた。
俺達が来てから十分後くらいには、スーツのおじさんとか、近所のおばさんらしきグループが来たりして、店内は俄かに活気付いたりした。
他愛のない会話で笑う咲の表情を見ているのが、楽しかった。

「そろそろ、行く?」
「咲はもういいの?」
「うん。あったまったから。ありがとう」
「どういたしまして」

トレイと空っぽの紙コップを片付けて、コートを着込んだ咲の手を握る。
階段をゆっくりと下りて自動ドアの向こうへ踏み出すと、冷え切った風が頬を叩いた。

「うっわ、寒」
「滝沢くん、マフラーないからだよ」
「あ、咲はマフラーでガードできるんだ。なるほどね」

振り返ると、白いマフラーで首から頬を包んでいる咲が笑っていた。
赤いコートと白いマフラーに身を包んだ咲を見て、なんとなく、初めて出逢った時のことを思いだした。
ホワイトハウスも噴水も警察官も何も揃ってないけど、ふとあのシーンが脳裏を過ぎった。

「滝沢くん、途中でマフラー見てみる?」

立ち止まった俺の顔を覗き込むように、咲が首を傾げた。
気遣ってくれている咲に、胸が熱くなって、全身があったかくなった気がする。

咲の手を握って、冷えないようにとポケットに突っ込んだ。
え、滝沢くん? 戸惑った咲の声がする。

「マフラーはいいよ。咲の手があるし」
「…、でも、すぐ冷えちゃうかも」
「それにヒートテックだからね」
「それ、さっきも言ってたよ?」
「じゃあ、全裸じゃないし?」
「っ、…もう! あの時はホントにビックリしたんだから」
「俺もビックリしたよ。気付いたら全裸に拳銃、携帯だけ。完全に危ないヤツじゃん、って思ったね」

くすり、と咲は困ったように笑った。
ポケットの中の咲の手に、力が込められる。

「ねえ、滝沢くん」
「ん?」
「何でホワイトハウスだったの?」

記憶を消すと決めたところについて、訊かれたけど。
それを決めたあの時の俺が持っていた理由より、もっときらきらした偶然の方が、よっぽど綺麗で救われる。
だから、咲と出逢う前に持っていた理由は教えない。

ポケットの中の咲の手の温もりを確かめて、少し空を見上げた。


「咲に逢う為だよ」
「え、」


それが真実でいい。
失意と絶望に飲み込まれた俺を立ち上がられてくれたのは、間違いなく君だった。
だからそれが真実でいい。
本当に心からそう思って、咲の手を強く握り締めた。

■END

タイトルはkalafinaより。ぼーっと書き殴ったお話。
滝沢くん視点って難しい。なんかこれ書いちゃってよかったのかな…ネタ的にあれとかぶったりしないことを祈る。

滝沢くんカッコイイ! でもそのカッコイイとこを欠片も表現できてない自信がある…。
カッコイイとどSは違うんだよ!(←自分によく言い聞かせたい。らしい。笑)

そうそう、GW明けるとちょっと消えるかもしれません消えたくないけど…・゚・(つД`)・゚・ ウェ―ン
消えるというか休日更新しかできなくなったら申し訳ない!
滝咲可愛くて生きているのがつらいのに、そんな滝咲に触れられない時間が長いと哀華さんしんじゃう。しんじゃうよ。

その期間中はジュイス(黒崎さん)に『お前ならエデンを任せられる』とメールで頼んだ。(笑) 殆どノリですね、特に深い意味はないですね!
ただエデン妄想を私の分までもりもりお願いしますとは言ったつもり(*´∀`*)

滝咲かわいくてヤバイ。
いろいろ書きたい。
携帯妄想取り込もうとして、うっかり書き殴りに夢中になってしまった!

睡眠時間<滝咲妄想 というわけで、うっかり日付が変わった…寝るよ哀華さん!

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無題
駄目ですもう素敵すぎます(ぱたむ
なんだもうコーンポタージュ!(意味不明
”失意と絶望に飲み込まれた俺を立ち上がられてくれたのは、間違いなく君だった”てところ、つきねこさんドストライクです!!!
おててポケットつなぎとたたまらなくもだもだします!うわー!きゃー!(うるさくてすみません
毎回毎回PCの前でにやにやが止まりません><
毎回騒ぎにきてすみませんでも美味しかったですごちそうさまでした!!!(いい逃げ
つきねこ 2010/04/22(Thu)00:39:27 編集
つきねこさんへ
平澤くんがコンポタ好きなのは哀華さんの脳内イメージなんですが(笑)
つきねこさんにニマニマしてもらえて嬉しいですー! 哀華さんのどストライク、いつもつきねこさんから頂いてますのでお返しできてよかった^^
いつも嬉しくなるコメントありがとうございます!
私もつきねこさんの滝咲を読み、PCの前でもだもだして、きゃっきゃ騒いでます…カッコイイよたっくん!とか、可愛いよ咲ちゃん! とか、滝咲が可愛すぎてしぬと悶えてます(笑


哀華  【2010/04/22 23:52】
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非公開
雑多妄想部屋。

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東のエデン/滝沢朗×森美咲
他/男女王道CP

【 好き 】
I've Soundが大好き。特にKOTOKOちゃんらぶ。
fripSide(第一期・第二期)も好きです。naoすき。
ダークトランス系がとてもすき。
エデン影響でsfpも好き。
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