snow blind（東のエデン/滝咲）

■東のエデン/滝咲
※#11『さらに続く東』のお話です。ご注意ください。

ご覧になる方は、「つづきを読む」からお願いします。

snow blind

---

雪が、舞い散る。
半壊したメリーゴーランド、立ち昇る煙、ミサイルの痕跡を覆うように、小さな雪が降っている。
朝日の中に飲まれて消えていく雪に息を吐いて、俺は抱きかかえる咲に視線を落とした。

「たった一人だけ、信じてくれた子がいたから」

ジュイスへの依頼を済ませると、咲が目を開ける。服は汚れちゃったけど、立ち上がれるってことは怪我はしてないということだ。ほっと胸を撫で下ろしたけど、どうしてだろう、この胸は痛いままだ。なんて、そんなの本当はもう、たぶん、とっくに分かってたんだ。気付かないふりをしていただけで。

咲の重みが消えた腕を持ち上げて、さよならの申請を、咲に聴こえないように告げる。

ノブレス携帯を耳に当てたまま、俺は咲の横に立つ。
二人で見る朝日が、最後にならないように願ったのは、俺だけ。咲は、知らないから。

呆けている様子の咲に身を寄せて、ノブレス携帯を握る。
あの音が合図になって、これから俺はすべてを失う。
記憶が消えてしまう前に、咲にノブレス携帯を渡さなきゃ。
そう思ったまま、あの終わりの音を待った。
三十秒にも満たない時間の中、走馬灯のようにここ数日間の出来事が頭の中を駆け巡る。
咲と、咲のおかげで知り合えた平澤達との、短い日々。楽しかった。

目を細めて、忘れるの勿体ねーや、と思う。
でも、もうどうにもならない。誰かがどうにかしなきゃ、どうにもならないんだから。

「ちぇ。このメリーゴーランド、ゴールデンリングがついてねぇや」

俺が出した申請を、咲はどう受け取るだろう。
俺が残すメッセージを、咲はどう感じるだろう。

きょとんとした様子の咲に、それ以上はもう何も言えなかった。
─── あの音が聞こえる。すべてを消す終わりの音。
いつかも聴いた甲高いその音に飲み込まれながら、俺は咲のコートにノブレス携帯を忍ばせる。
掌から零れ落ちていく砂のように、記憶もさらさらと小さく零れだしていく。

雪が、舞い散る。
半壊したメリーゴーランド、立ち昇る煙、ミサイルの痕跡を覆うように、小さな雪が降っている。

たった一人、信じてくれた子の名前を呼ぶこともできずに、俺は“滝沢 朗”で居られる最後の一瞬に、ただ祈った。


たとえ最後の冬になっても
君と再び出逢える日まで
消えずに居るよ　どうか見付けて

■END

滝沢くん→咲ちゃん。タイトル等はfripSideから。BGMで聴いてたら、歌詞がね。うん。
それっぽかったんだけど、残念ながら歌詞は咲ちゃん視点っぽい。私、って言ってるし…。
滝沢くんだったらいいのにと思って、都合のいいとこだけ抜粋して妄想してみた結果です。

滝←咲ソングはあると思うんだけど、滝→咲ソングってないのかなあ…。
そもそも哀華さん男性ヴォーカル滅多に聞かないからしょうがないけど。

ところでアニメ版と小説版と、#11の最後のシーン違いますよね？
反転しますがアニメ版は半壊して煙が立ち昇るメリーゴーランドに近付いていく？だけだった記憶があるんですが、小説版は二人でメリーゴーランドに乗って、滝沢くんと咲ちゃんはしっかり手を繋いでいた！…ようなんですが。いやどっちも美味しいけど。

そして、滝沢くんは、難しい。（←どSな滝沢くんならすぐに書けるのにね…。爆）