■東のエデン/滝咲
※劇場版Ⅰのお話です。ご注意ください。
※劇場版Ⅰのネタバレは勿論していますが、テレビシリーズ#11『さらに続く東』の後のお話っぽいかもです。
ご覧になる方は、「つづきを読む」からお願いします。
※劇場版Ⅰのお話です。ご注意ください。
※劇場版Ⅰのネタバレは勿論していますが、テレビシリーズ#11『さらに続く東』の後のお話っぽいかもです。
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The Invisible AIR KING
─── 咲、信じてくれてありがとう。俺はずっと、君と旅した場所にいます。
ノブレス携帯から聴こえてきた声に息を呑んで、私は布団の中で丸くなる。
短いメッセージの再生はすぐに終わるけど、胸を貫く衝撃は消えない。
震えたのは指先か、唇か、この心か、どれにも当て嵌まる気がするけど、もう私には分からない。
だって視界がじんわりと滲んでいて、それどころじゃない。鼻の奥からツンとした痛みが襲ってきて、呼吸ひとつが湿気ってる。
目尻に浮いた涙を拭って、私はノブレス携帯を操作する。持ち主の消えたノブレス携帯は、私と彼とを繋ぐ唯一の接点なのかもしれない。
データフォルダを開いて、ある一枚の画像を表示する。
日本へ帰国したあの日、滝沢が撮影したたった一枚の写真だ。
手に持ったノブレス携帯を傾けて、そこに映る彼の姿を、じっと見つめる。
「…滝沢くん」
零れた声に答える人は、いない。
ディスプレイに表示されているのは、まだ少しだけ硬い笑みを浮かべている滝沢と、彼に肩を抱かれてきょとんとしている咲の姿だ。
掠れる声とは逆に、想いは日に日に強くなり、咲の胸に降り積もっていく。
六十発のミサイル迎撃を果たした滝沢 朗は、突入してきた機動隊に確保されそのまま姿を消した。滝沢と一緒に行くことを望んだ咲や、二万人のニートに紛れて屋上に向かった平澤達も機動隊に捕まった。
勝利に酔いしれたニートの一部は、武装した機動隊に畏怖と混乱の眼差しを向け叫んだ。あちこちから声が上がり、耳を塞ぎたくなる咲の目の前で、滝沢は胴上げされた。
どうして滝沢だけがそんな扱いをされているのか分からなかったが、咲にはそれを考える余裕はなかった。
腕を引かれて振り返れば、機動隊の一人が何かを告げる。
だが、周りの喧騒が強すぎて咲には聞こえない。捕まれた腕を無意識に振り払い、咲は胴上げされる滝沢へ手を伸ばす。必死に彼の名前を呼んだ。
しかし滝沢は咲を見ない。滝沢は気の抜けたような顔で、夢でも見ているかのような表情で、なされるがまま連れ去られていく。
咲の呼び声も喧騒に飲まれて消えていき、現実に押し流されるようになってしまった。
警察からの取り調べが終わっても、一部のマスコミに追われる日が続いた。そんな咲を姉夫婦は見守り、エデンメンバーは庇い続けた。
目まぐるしい現実にふと気付いた時にはもう、滝沢は行方をくらませていた。警察に捕らえられたという記録そのものが抹消され、手も足も出なかった。
友人らは肩を落とす咲の身を案じてくれたが、咲はすぐにそれに応えることができなかった。滝沢が目の前から消えてしまったことは確かな事実なのに、それを信じられない自分が不思議だった。
まるで夢の中のよう、雲の上を歩いているような、ふわふわとした世界。
だけど、夢では有り得ない。滝沢は咲の傍にいないだけで、何処かで咲を待っているのだ。
消えてしまった滝沢 朗という男の子。でも、彼が存在していたという痕跡だけが、メディアで叫ばれ続けている。
「撃墜王……」
ミサイルを撃ち落した彼の姿は、携帯電話のカメラによって撮影され、『東のエデン』に大量にアップされた。
彼は若者を中心に爆発的な人気を集め、誰が呼び始めたのか、撃墜王を意味するAIR KINGという名称がつけられていた。
六十発のミサイル迎撃を果たした彼の功績を考えれば、強ちそれも間違いではないのだろうけれど、咲はなんとなく複雑な気分だった。
世間から見た彼は、テロリスト、撃墜王、犯罪者のいずれかだ。メディアは彼のことを囃し立て、無責任な戯言を垂れ流しにしている。ミサイルを撃墜する姿を見られたのでは、このご時世、それも仕方ない(避けられなかった)と思う。
だから、咲は不安なのだ。滝沢 朗という男の子が、AIR KINGに全てを乗っ取られて(食べられて)しまいそうで。
深呼吸をひとつして気分を落ち着けると、咲は画像を閉じる。
そのまま時刻を確認すると、もう真夜中だ。
探しても探しても、彼は見付からない。
滝沢と旅した場所は限られている。
流石にワシントンはそう何度も行けないけれど、国内なら何度も足を運んでいる。
彼の手を離してしまったあの冬の日から、もう随分と日が経っていた。
「滝沢、くん」
探しても、探しても。
想っても、想っても。
胸が潰れそうな現実がいつでも目の前にあって、この心を支えるのはたったひとつだけ。
目を閉じて、布団の中に深く潜り込む。暗闇に意識を沈めて、この心が求めるのはひとつだけだ。
─── 咲、信じてくれてありがとう。俺はずっと、君と旅した場所にいます。
耳元に当てたノブレス携帯から聴こえてきた声は、あまりにも優しくて遠い。
何度も聴いた声、何度も繰り返したメッセージ、それは決して変わることのない音声。
この想いも決して変わらないものだと、咲は自身を抱き締めるように丸くなる。
「たきざわ、くん」
泣くように呼んで、咲は眠りに落ちる。
消えてしまった彼を求めて(あの日から途切れてしまった声を探して)、明日も咲は何処かを彷徨うのだろう。
彼のことを知らない誰かがいくら彼を『撃墜王』と祭り上げても、恐らくそれに彼は応えない。
姿の見えない撃墜王の心に届くのは(届けられるのは)、滝沢 朗という男の子が選んだたった一人の女の子だけだ。
残されたメッセージから読み取った想いを信じて、どんなに胸が痛くても咲は諦めない。滝沢の温もりをこの手に感じたいから、彼女は滝沢が消えた世界でも立っていられる。(勿論、支えてくれる家族や仲間も居てくれるから、だけれど。)
一方的なメッセージかもしれないけれど、それでも彼に応える為に、咲は滝沢のことを探し(求め)続ける。
■END
ちょっと今更だけれども、劇場版Ⅰの滝沢←咲なお話。
咲ちゃんだけが滝沢を救い出せるんだよ、と思ったけど…継ぎ接ぎなので、上手く表現できてるか…。
書きたいネタが多すぎる。
滝咲イチャイチャを書きたいよー!
うちのジュイス(黒崎さん)と打ち合わせをして萌え死んだ。
それを糧にがんばる…。
読んでくれてありがとうございます。
わりとシリアスが多かったり、滝咲というよりエデンメンバー中心だったりしますけど、読んでもらえて嬉しいです。
─── 咲、信じてくれてありがとう。俺はずっと、君と旅した場所にいます。
ノブレス携帯から聴こえてきた声に息を呑んで、私は布団の中で丸くなる。
短いメッセージの再生はすぐに終わるけど、胸を貫く衝撃は消えない。
震えたのは指先か、唇か、この心か、どれにも当て嵌まる気がするけど、もう私には分からない。
だって視界がじんわりと滲んでいて、それどころじゃない。鼻の奥からツンとした痛みが襲ってきて、呼吸ひとつが湿気ってる。
目尻に浮いた涙を拭って、私はノブレス携帯を操作する。持ち主の消えたノブレス携帯は、私と彼とを繋ぐ唯一の接点なのかもしれない。
データフォルダを開いて、ある一枚の画像を表示する。
日本へ帰国したあの日、滝沢が撮影したたった一枚の写真だ。
手に持ったノブレス携帯を傾けて、そこに映る彼の姿を、じっと見つめる。
「…滝沢くん」
零れた声に答える人は、いない。
ディスプレイに表示されているのは、まだ少しだけ硬い笑みを浮かべている滝沢と、彼に肩を抱かれてきょとんとしている咲の姿だ。
掠れる声とは逆に、想いは日に日に強くなり、咲の胸に降り積もっていく。
六十発のミサイル迎撃を果たした滝沢 朗は、突入してきた機動隊に確保されそのまま姿を消した。滝沢と一緒に行くことを望んだ咲や、二万人のニートに紛れて屋上に向かった平澤達も機動隊に捕まった。
勝利に酔いしれたニートの一部は、武装した機動隊に畏怖と混乱の眼差しを向け叫んだ。あちこちから声が上がり、耳を塞ぎたくなる咲の目の前で、滝沢は胴上げされた。
どうして滝沢だけがそんな扱いをされているのか分からなかったが、咲にはそれを考える余裕はなかった。
腕を引かれて振り返れば、機動隊の一人が何かを告げる。
だが、周りの喧騒が強すぎて咲には聞こえない。捕まれた腕を無意識に振り払い、咲は胴上げされる滝沢へ手を伸ばす。必死に彼の名前を呼んだ。
しかし滝沢は咲を見ない。滝沢は気の抜けたような顔で、夢でも見ているかのような表情で、なされるがまま連れ去られていく。
咲の呼び声も喧騒に飲まれて消えていき、現実に押し流されるようになってしまった。
警察からの取り調べが終わっても、一部のマスコミに追われる日が続いた。そんな咲を姉夫婦は見守り、エデンメンバーは庇い続けた。
目まぐるしい現実にふと気付いた時にはもう、滝沢は行方をくらませていた。警察に捕らえられたという記録そのものが抹消され、手も足も出なかった。
友人らは肩を落とす咲の身を案じてくれたが、咲はすぐにそれに応えることができなかった。滝沢が目の前から消えてしまったことは確かな事実なのに、それを信じられない自分が不思議だった。
まるで夢の中のよう、雲の上を歩いているような、ふわふわとした世界。
だけど、夢では有り得ない。滝沢は咲の傍にいないだけで、何処かで咲を待っているのだ。
消えてしまった滝沢 朗という男の子。でも、彼が存在していたという痕跡だけが、メディアで叫ばれ続けている。
「撃墜王……」
ミサイルを撃ち落した彼の姿は、携帯電話のカメラによって撮影され、『東のエデン』に大量にアップされた。
彼は若者を中心に爆発的な人気を集め、誰が呼び始めたのか、撃墜王を意味するAIR KINGという名称がつけられていた。
六十発のミサイル迎撃を果たした彼の功績を考えれば、強ちそれも間違いではないのだろうけれど、咲はなんとなく複雑な気分だった。
世間から見た彼は、テロリスト、撃墜王、犯罪者のいずれかだ。メディアは彼のことを囃し立て、無責任な戯言を垂れ流しにしている。ミサイルを撃墜する姿を見られたのでは、このご時世、それも仕方ない(避けられなかった)と思う。
だから、咲は不安なのだ。滝沢 朗という男の子が、AIR KINGに全てを乗っ取られて(食べられて)しまいそうで。
深呼吸をひとつして気分を落ち着けると、咲は画像を閉じる。
そのまま時刻を確認すると、もう真夜中だ。
探しても探しても、彼は見付からない。
滝沢と旅した場所は限られている。
流石にワシントンはそう何度も行けないけれど、国内なら何度も足を運んでいる。
彼の手を離してしまったあの冬の日から、もう随分と日が経っていた。
「滝沢、くん」
探しても、探しても。
想っても、想っても。
胸が潰れそうな現実がいつでも目の前にあって、この心を支えるのはたったひとつだけ。
目を閉じて、布団の中に深く潜り込む。暗闇に意識を沈めて、この心が求めるのはひとつだけだ。
─── 咲、信じてくれてありがとう。俺はずっと、君と旅した場所にいます。
耳元に当てたノブレス携帯から聴こえてきた声は、あまりにも優しくて遠い。
何度も聴いた声、何度も繰り返したメッセージ、それは決して変わることのない音声。
この想いも決して変わらないものだと、咲は自身を抱き締めるように丸くなる。
「たきざわ、くん」
泣くように呼んで、咲は眠りに落ちる。
消えてしまった彼を求めて(あの日から途切れてしまった声を探して)、明日も咲は何処かを彷徨うのだろう。
彼のことを知らない誰かがいくら彼を『撃墜王』と祭り上げても、恐らくそれに彼は応えない。
姿の見えない撃墜王の心に届くのは(届けられるのは)、滝沢 朗という男の子が選んだたった一人の女の子だけだ。
残されたメッセージから読み取った想いを信じて、どんなに胸が痛くても咲は諦めない。滝沢の温もりをこの手に感じたいから、彼女は滝沢が消えた世界でも立っていられる。(勿論、支えてくれる家族や仲間も居てくれるから、だけれど。)
一方的なメッセージかもしれないけれど、それでも彼に応える為に、咲は滝沢のことを探し(求め)続ける。
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ダークトランス系がとてもすき。
エデン影響でsfpも好き。
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