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エデンに響き渡るのは、焦がれた声。
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■東のエデン/滝咲&エデンメンバー
※劇場版Ⅱの後(ED後)のお話です。ご注意ください。

【サントラ/07:受理されません!】をBGMにご覧ください。

ご覧になる方は、「つづきを読む」からお願いします。

受理されません!



「タッくん、咲が構ってほしそう」
「ふうん? そうなんだ、咲?」
「え!? あ、そ、そんなことな、いよ」

缶ビールを手にした滝沢が、みっちょんに煽られて咲へ視線を向ける。
ソファに腰掛けた咲は真っ赤になって、もごもごと否定しながら俯いた。
滝沢は距離を縮めると、すっと咲の顔を覗き込む。咲が驚いて身を引く。滝沢が追う。
みっちょんとおネエが、物陰に隠れて(全然隠れていないが)、そんな二人の様子を窺っている。

いつもの悪乗りが始まった。
部屋の様子を一瞥して、平澤は共に買出しから戻ってきた大杉に声をかける。
大杉にとってこの情景は酷だとは思うが、もうそろそろハッキリさせておいてもいいんじゃないかと思った。


「いいのか?」
「よくはないよ。…でも、悔しいけどさ……咲ちゃんが選んだなら、仕方ないじゃないか」


平澤の問いかけに、大杉は仏頂面で答える。身長は高いが童顔な大杉がどれだけむっとした顔をして見せても、どこか愛着が残った。とはいえ、長年彼の奮闘を生暖かい目で見守ってきた平澤には、その横顔が本当に泣いているかどうか判別がつく。
むぐぐぐ、と唇を結んで耐え忍ぶ大杉の姿に、だいぶ大人になったな、と平澤は肩を竦めた。
どういう意味、とジットリとした目を向ける大杉。
そんな彼等の後ろから、遅れてきた春日が、ひぃひぃと悲鳴を上げながら階段を上ってきた。
その両手には重たそうなコンビニのビニール袋がある。中身はおつまみとアルコール類。
更にその後ろから、パンツが姿を見せる。こちらも重そうだ。
じゃんけんに負けたので、荷物持ちをしているというわけだが、言いだしっぺが彼等なのだから文句も言えない。

平澤が、お疲れさん、と春日からビニール袋をひとつ受け取った。大杉も受け取ろうと手を出す。
そんな彼等の背後、部屋の中からは、


「滝沢くん、だめ! だめだよ、あ…、」
「いいでしょ、さーき?」
「え、え…、だめ、っ」


などという声が聴こえてきている。焦る咲と余裕綽々の滝沢。BGMには、みっちょんとおネエの黄色い声。
あらぬ妄想が大杉の脳内で爆発した。これは咲ちゃん(の貞操)が危ない!?
長年想い続けて来た歴戦の乙女の敗北(?)を感じ取り、憤慨した大杉は意を決して振り返った。(地雷を踏んだのぉ、と後ろで板津が呟いた。)


「へえ。咲、こんな所に黒子あったんだ」
「う、うん…」
「気付かないなあ、これは」


部屋に踏み込んだ大杉が目にした光景は、彼の心を折るのに十分すぎた。

滝沢が咲の横に座り、咲の髪の毛を手にして耳やら首筋やらを露わにしている。
お団子にしている時とは違う、髪を掻き揚げた時のような艶かしさがそこにはある。

どこか楽しそうに、滝沢は咲の耳のあたりをじっと観察していた。
咲は赤くなって、ただひたすら滝沢からの視線に耐えている。もじもじと居心地悪そうに身動ぎして、ちらりと滝沢を見やれば、滝沢はにっこりと笑う。

ソファの上はまるで二人の世界で、遠巻きにおネエとみっちょんがにまにましていた。

耐え切れなくなり、咲はか細い声で滝沢に懇願する。
大杉は顔を真っ赤にして、口をぱくぱくさせ、目は死んだ魚のようになりながら、よろりと壁にその身を預けた。


「もう、いいでしょ?」
「─── ……、…」


買出しから戻ってきた彼等に気付いていないのか、滝沢と咲はお互いを見つめ合ったままだ。
蚊の鳴くような頼りない声で訴える咲に微笑んで、滝沢はそのまま咲の耳元に唇を寄せる。

きゃー、とギャラリー(みっちょん&おネエ)の歓声はより高くなり、大杉はずるずるとその場に崩れ落ちた。
そんな大杉を助け起こそうとした平澤だったが、彼もまたこういった出来事には免疫がない上に、愛娘のように可愛がっている咲の見たことない乙女の表情に動揺し、なぜか照れながらおろおろしている。平澤は何か言いたいようだが、とても口出しできない雰囲気にそのまま立ち尽くした。

周囲の状況に気付いているのか気にしていないのか、滝沢は彼等の目の前で咲に何事かを囁くと、そっと顔を離した。
その唇が咲に触れることはなかったというのに、滝沢の声だけで咲は胸がドキドキして、皆からの視線に恥ずかしくなって、林檎のように真っ赤な顔で滝沢を睨む。


「─── た、…滝沢くん!」
「あははは、ごめんごめん」


睨まれた滝沢は、笑って咲のパンチを受け流した。
ぺちぺちと掌を叩いてくる咲を見て、おかしそうに笑っている。
泣きそうになっている咲に追い討ちをかけるように、おネエとみっちょんが『タッくん、何て言ったの?』なんて訊いている。
それ、訊くの? と焦っている咲の頭をわしゃわしゃと撫でながら、滝沢は、

「ヒ・ミ・ツ」

ともったいぶるように言って、にっこりと微笑んだ。

えー、とブーイングしているみっちょんとおネエに笑みを見せたまま、滝沢は缶ビールを傾ける。
彼はなんとなく機嫌が良さそうだ。

耳に落ちてきた滝沢の声と、それが齎した消えない熱に息を吐き、赤い顔のまま、咲は上目遣いで滝沢を見つめる。


「滝沢くん」
「うん?」
「…もしかして、酔ってる?」
「知りたい?」
「…ぅ」


そうして、自然と距離を詰めてくる。
気を抜けば唇が触れてしまいそうな程の距離に、滝沢はただ微笑んでいる。
咲は心臓が飛び出しそうだった。ドキドキを飛び越えて、バクバクと喚いている。

答えられずに息を呑むと、


「た、き、ざ、わぁああああー!」
「うわっ!?」
「咲ちゃんに何をー!」
「あー、大杉? 俺まだ何もしてない、けど」
「…『まだ』!?」


物凄い勢いで突進してきた大杉が、滝沢の肩をがっしりと掴んだ。滝沢と咲との距離が開く。
次いで、とぼけた滝沢の言葉に大杉が涙ぐむ。
それを見ていた平澤が我に返り、赤面しながらビニール袋を放り出して滝沢に詰め寄った。


「たたた滝沢! まだ咲をやるとは言ってないぞ!?」
「あれ? 平澤に許可もらうんだ、咲のこと?」


きょとん、とした滝沢が気さくに笑う。
とぼけた返答に、平澤と大杉がそれぞれの意見を喚き散らす。
それを聴きながら、滝沢は楽しそうに笑い、たまに受け答えをしているようだ。

突然の展開に吃驚した咲は、目をぱちぱちとさせ、ピンチから逃れたことを知ると、そっと安堵した。
胸のドキドキは小さくなったけれど、少し残念な気もするのは何でだろう、と滝沢の背を眺めながらぼんやり考えて、また赤くなる。

ほう、と胸を撫で下ろしたのも束の間、後ろからみっちょんとおネエの魔手が伸びてきた。
悲鳴を上げて逃れようとする咲だが、みっちょんの『教えて』オーラとおネエの『逃がさないわよォん』オーラに阻まれて、どうにもできない。
ハンターに捕まった獲物のように焦った様子で周囲を見回し、突破口もしくは救援者を探すが、そんな都合のいいものはない。

近くで平澤と大杉の猛攻を受け流している滝沢に助けを求めて視線を向けると、気が付いたのか偶然なのか、滝沢は咲を振り返った。


「滝沢く、」


手を伸ばした咲の視線の先で、滝沢は人差し指を唇に当てる。
さっきのは秘密にね、というメッセージ。
無理かも、と弱気な咲へ向けて、滝沢は唇を動かした。


─── 続きは二人きりの時にね。


耳打ちされた言葉を再び紡いだ唇に、咲はくらくらとして何も考えられなくなった。
どうも、咲の意思とは関係なしに、事態は進んでいるらしい。
滝沢の言っていることが、本気なのかそうではないのか、咲には判別がつかなかったけれど、本気で拒絶する気が起きない自分に気が付いてしまった。

だから結局、咲の言葉は聴こえないふりなのだろう。
返す言葉が見付からない咲が見ている目の前で、滝沢は笑った。

時と場合を考えた口先だけのストップだと、咲よりも先に滝沢は気が付いていたのかもしれない。

ずるいよ、と訴える咲を見て、滝沢は『ごめん』と笑って咲に手を伸ばした。
何も考えずに、咲は滝沢の手を取る。
しっかりと握られた手。安心する。
てのひらから伝わってくる温もりが、頬を熱くする。
後ろでまた、みっちょんとおネエが黄色い声を上げているのも、滝沢の背後で大杉と平澤がすごい顔をしているのも、咲は気にならなかった。

ソファから立ち上がった滝沢は、その勢いのまま咲の手を引っ張り、その場から走り出す。
え、と声を漏らす咲は、混乱しながら滝沢に手を引かれて部屋の出口へ向かった。
背後から、訝しげな視線、声。


「タッくん?」
「ちょっと散歩、してくるよ」
「お、おい滝沢、まだ話は、」
「んじゃ、また後で! あ、板津、水もらっていい?」
「ほれ、ビンテージ。あんま姉ちゃん、いじめんように」
「分かってるよ。咲、行こうか?」
「え…、と?」


呆れた目でペットボトルを手渡した板津に感謝して、滝沢は咲を促した。
皆からの視線が背中に突き刺さる。おろおろして、咲は困ったように滝沢を見上げた。


「酔い醒ましの散歩、やめとく?」


問われて、咲は後ろを振り返った。
おネエとみっちょんが手を振って、にやにやしている。
それでもその視線は暖かく、優しかった。

咲はもう一度、滝沢を見つめる。
滝沢は優しく、ただ咲の答えを待っていた。

咲は繋いでいた手に、力を込める。
ふ、と滝沢の頬が嬉しそうに緩んだ。


「じゃあ、行こうか。みんな、また後で」
「ちょっと、行ってくるね」


手を繋いだ二人は揃って振り返り、ごく自然に歩き出した。
夜の中に消えていく二人を、板津がひらひらと手を振って見送る。
背中が見えなくなった頃、耐え忍んでいた大杉が、ついに涙をぼろぼろ零してソファへ倒れこむ。


「咲ちゃああん! 女の子のままでいてええええ!」
「…ちゃんと戻ってくるんだろうな。誰か、三十分以内に戻ってこなかったら、滝沢…いや、咲に電話を!」
「こういう時にジュイスがいれば、……どうなるんでしょうか、師匠?」
「んぁ?」


泣き出した大杉の隣で暗鬱な表情を浮かべる父親ポジションの平澤(混乱中)を心から心配そうに見つめ、無力な自分を嘆くように春日は板津に問いかけた。
板津は持っていたビニール袋を置くと、その中からオレンジジュースを取り出して、キャップをあける。


「受理されんけぇの」
「あんまりです、師匠…!」


ばっさりと言い捨てると、板津はやや困った顔で『そげなこと言っても、人の心は変えられん…』と、口には出さずに飲み込んだ。


■END

After Storyの滝咲とエデンメンバー。飲み会。書いてみたかった。
昨日サントラをGETしてきたので、それっぽいBGMからタイトルを拝借。
これはサントラGETする前から書いてた書きかけネタだったので、サントラとちぐはぐかもしれませんが…^^;
今後はサントラから、ちゃんと妄想したいです。
というか、サントラから妄想するなら、こんな長くならないはず。短文だと思うんだけどなあ(笑)
今後もサントラ妄想できたらしたいです。(ただ難関が既に。『15 柞葉の』…これちょっと意味が掴めない。汗)

大杉くんごめん。(笑) 平澤はやっぱりお父さん。
滝沢くんは酔ってたんでしょうか、それとも…?
なんか、上手いこと滝咲を書けなかった気もする…orz
次はただのラブイチャを書きたい!(これはラブイチャに分類されないのかー?)

目を通していただき、ありがとうございました!

ところで『13 Tactics』がFate/stay nightで流れていても違和感ないと思うんですが(もしくは無敵王トライゼノンでも哀華さんは違和感ない。でもそのネタ誰がわかる!?)

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マスターのこと
HN:
哀華
性別:
非公開
雑多妄想部屋。

【 推奨CP 】
東のエデン/滝沢朗×森美咲
他/男女王道CP

【 好き 】
I've Soundが大好き。特にKOTOKOちゃんらぶ。
fripSide(第一期・第二期)も好きです。naoすき。
ダークトランス系がとてもすき。
エデン影響でsfpも好き。
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