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エデンに響き渡るのは、焦がれた声。
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■東のエデン/滝咲前提、咲と良介義兄さん
※劇場版Ⅱの後(わりと直後)のお話です。ご注意ください。

ご覧になる方は、「つづきを読む」からお願いします。

夢中で手を伸ばした先に



家へ戻った私を迎えたのは、満足そうに笑っている良介義兄さんだけだった。
朝子お姉ちゃんには怒られると思って顔を出してみただけに、肩透かしを食らった気分。
お姉ちゃんは、と訊いてみたら、散歩に行ってるよ、と良介義兄さんは笑った。
姪っ子を連れて散歩に行ったということは、気を紛らわせる為に表に出たのかもしれない。
たぶん、私のことを考えて、良介義兄さんがお姉ちゃんを説得してくれたんだろう。
お姉ちゃんの靴がない玄関を見下ろして、ぼんやりとそう思った。

昨日の夜。豆柴を連れてきて、という無理なお願いを、良介義兄さんは聞いてくれた。
パン屋の朝は何時だか知ってるの、と怒鳴るお姉ちゃんの気持ちも、知っていた。
だけど譲れなかった。お姉ちゃんにとって、良介義兄さんにとって、このパン屋が大事なものだって知ってるし、私にとっても勿論ここは大切な場所だ。
だけど、譲れなかった。私には、私だけに大事なものが出来てしまった。
そんな私の為、日付も変わろうかという時間に、良介義兄さんは車を出して、豆柴を連れてきてくれたのだ。

パン屋さんはどうするのかと思ったら、今日は遅く開店するからと良介義兄さんはあっさり言った。
私のせいだから、何も言えない。黙り込んで俯くと、朝子にどやされるから弁解考えとけよ、と軽い笑い声が落ちてきた。
笑ってるけど、昨日はお姉ちゃんを説得するのにどれだけ苦労したんだろう。ありがたいやら申し訳ないやらで、胸が少し痛い。

身内にとことん甘い良介義兄さんに、また助けられてしまった。昔はそれが心苦しい重荷だったけれど、今は素直に感謝の言葉を届けられる。

ありがとう。 そう言って、ぺたりとその場に座り込むと、麦茶を用意してくれた良介義兄さんは、何か、よく分からないことを口にした。


「本気になれるもの、見付かったんだな」


言葉が出てこない。麦茶の入ったコップを持った手が、ぴたりと止まる。
目を逸らし続けてきた何かが、突然、目の前に落ちてきたような、錯覚。

本気になれるものって、なに。
本気って、どういう意味。

唾を飲んで、恐る恐る顔を上げる。
良介義兄さんは、少し安心したように笑っていた。
その視線は優しくて、ずっと見守ってくれていたことを、教えてくれる。


「今までお前、なんていうか、ふらふらしてたからな」
「…ふらふらって」
「やりたいことも、特別打ち込めることも、なかったろ?」


静かに続く言葉は、私の胸を抉っていく。
でも、事実だ。大学生になっても、将来の夢とか、希望とか、そういうものを見付けられなかったのは本当なんだ。
就職を控えた時期になっても、私には、そういったものがなくて。
これがあれば満足、とか、これを仕事にできたら楽しい、とか。
テレビに映るきらきらとした同い年の子達の就職活動とは、程遠い世界にいた。

夢中になれるものがなくても、生きてはいけるし、楽しいことが全くないわけじゃない。
ただ単純に、その何か、宝物のような何かがなければ、転んだ時に立ち直れない。
漠然とそんな確信を抱いていて、焦りもしていたし、投げやりな気持ちもたぶん少しはあった。

ああ、見透かされていたんだ。
理由はよく分からないけど、すごくそれが悲しかった。
何も持っていなかった自分が悲しいのか、それを知られていたことが悔しいのか、よく分からないまま唇を噛む。


「お前の事情はまだ聞いてないけどな、俺は好きなようにしてもいいと思うぞ」
「…すきな、ように?」


滝沢くんの顔が、脳裏を過ぎる。
顔を上げた途端、胸元で揺れたゴールデンリングを指先で確かめながら、私は良介義兄さんを真っ直ぐに見つめた。

曖昧な言葉だったけど、その声には確かな力が込められている。
良介義兄さんは、あまり話し上手じゃない。言葉が上手く見付からないのか、ぎこちなく頷いて、ただ気持ちをストレートに表現しようとしている。
滝沢くんならどう励ましてくれるんだろう。ふと、そんなことを考えてしまった。
それが良介義兄さんに失礼だと分かっていても、もう胸の中には滝沢くんが住み着いていて、どうやっても消えないし消してしまいたくない。

そう。
これが、私が見付けた大切なもの。
滝沢くんが、世間でどんな目で見られても、私は滝沢くんを信じてる。
今まで信じてきたんだから、これからだって信じていける。

約束だって、したから。

背中を見せた滝沢くんを追いかけて、精一杯に背伸びをして、初めて自分からキスをした。
ほんの数時間前のことなのに、どうしてこんなに遠いんだろう。覚えてるのに。ちゃんと、滝沢くんの声も、温もりも、覚えてるのに。この手はもう、滝沢くんに触れていない。

ゴールデンリングを握り締めて、息を吐く。


「お前が本気になれたなら、それだけで価値がある」


たぶん、良介義兄さんは、私が本気になれたもの、本気になったものが何なのか、気が付いてる。
なんとなく、そんな気がした。
何それ、とはぐらかすように呟くと、良介義兄さんは朗らかに笑った。


「朝子の説得は難しいかもしれないけど、なんとかなるだろ」
「…、」
「家族だからな。お前が大事なんだよ。だからほら、話せば分かる、ってな」


そう言って、良介義兄さんは麦茶を飲む。

ぎくり、とした。
どきり、とした。

ああ、もう分かってるんだ。知ってるんだ。私が抱く気持ちに、気が付いてるんだ。
恥ずかしくて、思わず俯く。でも、俯いたのはそれだけが理由じゃない。こわかったからだ。

良介義兄さんの言うことは、分かるつもり。
お姉ちゃんが私のことを心配してくれてるのも、分かってる。
家族だから。かけがえのない、大切な家族だから、誰よりも心配してくれていること、分かってる。

だから、話して納得してもらえるのか、分からない。認めてもらえるのか分からない。
だけど、譲れない。せっかく見付けた大切な気持ちを、消してしまいたくない。
私にとって家族が大事なように、お姉ちゃん達にとっても私が大事なら、滝沢くんとのことは、難しい問題になってくるのだろう。

それでも私は、彼と繋いだ手を離したくなかった。
失いたくない。何度、思ったんだろう。
譲りたくない。何度、願ったんだろう。

感謝してもしきれない程、お姉ちゃんにも、良介義兄さんにも、お世話になってきた。迷惑も沢山かけてきてしまった。恩を仇で返す、なんて思われたくはないけれど、どうやったって滝沢くんのことは譲れない。

だって、彼は私の王子様だ。

彼以外に私の相手はいないし、彼にとっても私がそういう存在であればいいと思う。
その答えはもう、半分くらいこの胸の中にある。
お互い言葉にはしていないけれど、あの約束が何よりの証だと思える。
それに、滝沢くんは、このゴールデンリングをくれた。
まるで再会を仄めかす魔法のように、私には思えた。

胸に渦巻く未来への不安に負けないように、首にかけてもらったゴールデンリングをそっと握り締める。


「良介義兄さん」
「なんだ?」


視線を向けて、呼びかける。


「ありがとう」
「お互い、朝子に怒られなきゃいいな」


下手な軽口を叩いて、照れくさそうに良介義兄さんはそう笑ってくれた。
うん、と頷いて、私はゴールデンリングに視線を落とす。

私が彼を王子様と見立てたなら、そう感じた私が彼を待ち望むのが筋だろう。
お姫様なんて柄じゃないかもしれないけど、せめて彼にとってお姫様でいられるように。


(滝沢くん)


私は、待ち続ける。王子様が助けに来るのを、じゃない。王子様が私のもとへ戻ってくるいつかの日を、夢見るように祈りながら、笑顔で待つんだ。
泣いてばかりの私なんて見せられない。約束を交わしてくれた滝沢くんの為にも、涙を見せずにその日を迎えられるように、私は早くも湿気る吐息を『さっき別れたばかりだから』と束の間すぎる再会のせいにして、ゆっくりと飲み込んだ。

夢中で手を伸ばした先に、いつかきっと滝沢くんの温もりが戻ってくると信じてる。

■END

劇場版Ⅱの良介義兄さんの『本気になれるもの見付かったんだな』的な台詞が妙に引っかかりまして、義兄から見た咲ちゃんを書いてみたくなりました。
良介義兄さんは咲ちゃんが空っぽなことに気が付いていたから、家族として支えてあげようと、(テレビシリーズで)あんなに優しかったんだと思いました。(遅い?)
なんか、そこらへんを思うと、『東のエデン』って本当に細部まで作りこまれた作品だなあと改めて感じます。

滝咲というか、滝←咲だ。
何度も言うけど、エデンはどのキャラも絡ませやすくて逆に困る。
あ、でも良介義兄さんのキャラが合ってるかは微妙です(笑)


拍手やらメルフォやら、いろいろとありがとうございます!!
とても励まされているので、調子に乗ってガンガン書いてます(*´∀`*)
好きなもの書いているので、滝咲というか今回みたいに滝←咲だったり、いろいろあるけど。
基本的に哀華さんが書くものはすべて滝咲前提なのです。公式万歳!


ところで昨日の殴り書きは誤字が酷い。ごめんなさいorz
サイトにあげる時に直します…。昨日は寝る時間だいぶ過ぎてて、慌ててたんだよーう。

喉が痛い。たいしたことのない風邪が、治らない。
うん原因はちゃんと寝てないからだよ分かってる。だって書きたいんだ…もん。

読んでくれてありがとうございます!

拍手[6回]

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HN:
哀華
性別:
非公開
雑多妄想部屋。

【 推奨CP 】
東のエデン/滝沢朗×森美咲
他/男女王道CP

【 好き 】
I've Soundが大好き。特にKOTOKOちゃんらぶ。
fripSide(第一期・第二期)も好きです。naoすき。
ダークトランス系がとてもすき。
エデン影響でsfpも好き。
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