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エデンに響き渡るのは、焦がれた声。
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■東のエデン/滝咲
※劇場版Ⅱの後(ED後)のお話です。ご注意ください。
※やや大人向けな意味合いを含むネタ、かも、しれません。

ご覧になる方は、「つづきを読む」からお願いします。

Are You Ready?



「滝沢くん」

ひどく弱々しい声で、咲は彼を呼び止めた。
彼はぴたりと立ち止まり、どうしたの、と視線で問いかけてくる。
その瞳はいつになく優しくて、向けられる視線に混ざる想いを感じ取って、咲はもどかしそうに頷き、言葉を選ぶ時間を稼ぐ。

なんと言えばいいのだろう。どうすれば、いい?
終電一本前の電車に駆け込み、夜の中を歩いて、二人は豊洲へ戻ってきた。
思いのほか帰りが遅くなってしまった。それはいい、構わないのだけれど。

「咲?」

こんな時間にこんな所に戻ってきたということはつまり、朝まで一緒に居るということで、男女が一晩を明かすということは今までの関係を壊してしまうかもしれない『何か』が起きる可能性が間違いなくあるのだ。
いつかのレイトショーの夜とは、違う。だってあの時は出逢ったばかりでお互いをよく知らなかった。でも今は、惹かれてる。どうしよもなく惹かれあっていることに気が付いていて、今までそれを口にしてこなかったことが不思議なくらいだ。

(キスはしたけど…)

難しい顔で咲は黙り込む。
何度か唇を重ねたことはあるけれど、胸に芽生えた感情に名前がついた今となっても、まだお互いにそれを教えていない。
相手の気持ちがある程度、態度で分かるとはいえ、この身は彼からの告白を受けていないし、彼もまた咲の想いを耳にしていない。
彼女はそれが不満なわけではない。
ただ、流されるように変わっていってしまいそうな雰囲気に、自分と彼との関係が壊れてしまうのではないかと、少しばかりの不安を覚えていた。それは複雑な女心と純情な乙女心が混ざり合った、実に難解な問題であり、咲自身がどうすればいいのか分からない、どうしたいのかはっきりとは分からない、晴れ間を覆うもやもやとした暗雲のようだった。

「さーき」
「え? …あ、」
「疲れた? もうすぐそこだけど、おんぶしようか?」

にっこりと笑って、滝沢は咲へ提案した。
彼は咲が疲れたのだと思ったのだろう。そう思われても仕方ない。
先ほどまで咲は眠たそうに、滝沢へ体重を預けていたのだ。終電の一本前という時刻、何とか家へ帰ろうと必死な人々でぎゅうぎゅう詰めとなった電車内で、滝沢は彼女を守るように立った。
咲を抱き締めるようにして、ガタガタと揺れる電車の中、咲が苦しくないようにと気を遣ってくれていたのだ。
当然のように行われるその気遣いに胸が熱くなって、咲は言葉が出てこなくなり、あんまりにも近いから、ごく自然に彼へぴたりとくっついた。
滝沢の胸へ預けた頭はやがて考えることを止めて、ただ彼を感じる為だけに目を閉じて。気が付いたら、眠りかけていた。
目が覚めたのは、優しく肩を叩かれた後だった。寝ぼけ眼のまま、顔を上げて。そこが何処なのか把握する前に、滝沢の顔が目の前にあった。
そして『降りるよ』と微笑んだ彼の言葉に、ようやく我に返った咲は、返事さえもままならず。ぷしゅりと開いたドアへ押し寄せる人波に、二人は流されるように押し出された。

手を引かれ、そのままこうしてショッピングモールの裏口までやって来たのだが、ここに来てようやく咲は現状を客観的に考えて気が付いてしまったのだ。
今、自分と手を繋ぐ、滝沢の温もり。それ以上を知ってしまうかもしれない、夜。
いやだ、という不快感は無い。断じてそういう拒絶の色は、胸の裡どこを探しても有り得ない。ただ、少しだけこわい。

おんぶを申し出た彼に、咲はふるふると首を振った。
目を合わせない回答に不審を覚えたのか、滝沢は声色を変える。

「どうかしたの?」
「…ううん」

どう答えるべきか迷い、咲は弱く否定する。言葉が出てこない。
あからさまに訊くのは憚られる問題だし、そんなもの口に出したところでぎこちなくなってしまうだけだ。
なら、口を噤んだ方が余程マシだ。咲はそう思った。
彼女は今のこの関係が物足りなく思う反面、気に入ってもいるし、滝沢 朗を見失いかけた過去があるからこそ、物足りないと思うこと自体が我侭ではないかとも感じていた。

きゅ、と咲は滝沢の手を握る。
この手がある。自分の手を握り返してくれる。
その温もりに嘘はなく、握り返してくれる手には彼の確かな意志がある。
自身を落ち着けるように繋いだ手を見つめる咲に、滝沢は静かに問いかけてきた。


「咲。もしかして、緊張してる?」
「え、」
「やっぱり。さっきからヘンだと思った。でもまあ、仕方ないよね。女の子だし」


答えなど言える訳もなく、ただ動揺する咲を見て、なぜか楽しそうに滝沢は言った。
ぴくりと肩を揺らして顔を上げた咲の目の前で、滝沢は微笑む。

その微笑を見て、咲は気が付いた。
自分が何を考えていたか、そして何に対して緊張に身を硬くしていたのか、見透かされていたことに。
呼吸が止まったかのような錯覚の後、咲は猛烈に恥ずかしくなって思わず目を逸らした。


「咲」


ずるいよ、滝沢くん。
耳に届いた声は優しく、名を紡いだだけなのに咲の心を包み込む。
緊張に硬くなっていた肩からは力が抜けて、握り締めた手は宥めるように緩やかに咲の手を握り返す。


「咲がいやがるようなことはしないよ。だから、今夜は俺に付き合ってくれない?」
「…、」
「─── やっぱり信用ないかな、こんなこと言っても」


逃げ道もないのに男にこんなこと言われてもそりゃ頷けないよね、と何やらひとりで納得して呟く滝沢の声が聴こえて、咲は途端にそれを否定したくて堪らなくなった。


「そんなことないよ。滝沢くん、」
「…咲?」


逃げ道がないなんて嘘だと思った。
彼は咲の意思を無視なんてしない。『咲がいやがるようなことはしないよ』と、彼自身がそう言ったばかりじゃないか。
なら、咲が戸惑えばそれを待ってくれるだろうし、咲が首を振ればその意思に従ってくれるということだ。
ほら。逃げ道がないなんて、嘘だ。滝沢が逃げ道を潰すなんてことはない。彼の言葉を信じれば、咲が望めばそれだけで逃げ道は出来上がるのだから。

それに、咲は滝沢を信用しているし、信頼している。
だから、そんなことないよ、と繰り返して、咲は滝沢に身を寄せた。

精一杯に身を寄せるけれど、何言ってるんだろう私、と恥ずかしいやら混乱やらでごちゃごちゃした気持ちで胸がいっぱいになる。
言いたいことを口にすることが気恥ずかしくて、唇は震える。
素直にその腕を取ることが出来ず、咲は立ち止まった彼の胸へ額を押し付けて俯いた。

ドキドキする。いつの間にか速まっていた鼓動に今更気が付いて、咲は息を吐く。
滝沢はそんな彼女に戸惑いはしたが、彼女に信用されているのだという事実に頬を緩めた。こんな風に態度で示してくれることが、語られる場合よりも嬉しいことだってある。

そっと、滝沢の手が咲の背中を撫でる。
あんまりにも優しくて、咲はうっとりと目を細めた。
顔が見えないから、今だけならどれだけ頬が緩んでも構わない。


「ありがとう、咲」
「うん」


耳元で囁かれた声は嬉しそうで、咲も嬉しくなった。
ちっぽけな不安は嬉しさに飲まれて消えていく。
躊躇いなく答えると、咲はそっと顔を上げた。
滝沢が気が付いて、ふと微笑む。
その瞳は、さっきまでの優しいだけの瞳じゃなくて。

あ、と些細な変化に気が付いた時にはもう、唇が触れていた。
思わず目を瞑る。前髪を退けて額に落ちてきた滝沢の唇に、咲の心臓は一気に鼓動を強くして、身体中に熱を送る。
そおっと瞼を上げると、真っ直ぐに見つめてくる滝沢が待っていた。
期待と喜びに満ちた瞳は夜の中でも輝いていて、緩んでいる頬は柔らかそうだ。


「いい?」
「……っ、」


嬉しげに、訊かなくてもいいことを訊く。
答えなんて分かりきっているだろうに、弾んだ声が咲の胸を熱くする。
消え入りそうな声で返事をする前に、滝沢はからかうように笑った。


「大丈夫。キスまでだから」
「え、…キスまで、って」


つまりそれは、それ以上のことも考えている、と。
歯に衣着せぬ物言いに、咲は真っ赤になってたじろぐ。
ぐるぐると目を回しだしそうな咲を見下ろして、滝沢はもう一押しとばかりに囁いた。


「それだけじゃ、物足りない?」
「っ!」


つい先刻、不安に揺れていた自分が考えたいたことを言い当てられたようで、咲は息を呑む。
もう一歩深く踏み込んだ関係になるのも、悪くはないのだ。そう、確かな意志で絆を深められるなら、この先もずっと一緒だと信じられるなら─── それでいい。
でも、急すぎる。今までこういった話題が上がらなかったし、二人きりで過ごす夜というのもなかった。だからこそ、先ほどは『今夜、何かがあるかもしれない』という不安のような期待に咲の心は揺れていた。
しかしいざ、二人の関係がひとつの転機を迎えるかもしれないという時になってみると、それは期待のような不安だったのではないかと怖気付いてしまう。

言葉もなく棒立ちしている咲を見て、滝沢はおかしそうに笑い出した。
無邪気な笑い声を上げる滝沢に、咲はぽかんとしていたが、やがて頬を膨らませて怒り出した。


「滝沢くんっ、何で笑うの!?」
「あはは、ごめん。咲、面白い顔してたから」
「面白い顔って…」


キスを迫ってからかっておいて、それはないよ、と咲は不満そうに滝沢を見上げる。
滝沢は、くくく、と笑いを噛み殺すと、咲の頭を撫でて息を吐く。
むー、とむくれていた咲だったが、頭を撫でてくれる手が心地良くて、少し力を抜いた。
落ち着きを取り戻した咲を見つめ、滝沢は言う。


「でも、可愛かったよ?」
「…面白いって言ったのに?」
「うん。いろんな顔する咲が面白くて、赤くなった咲が可愛かった」
「…、っ……もう」


真っ直ぐな言葉がくすぐったい。
頭を撫でられて、ほんのちょっと尖がった気持ちは消えてくれた。
恥ずかしくて目を伏せる咲の手を引いて、滝沢はゆっくりと歩き出す。
月明かりの中、咲は彼の隣に並び、寄り添った。滝沢はポケットの中から鍵束を取り出し、がちゃりと裏口の鍵を開け中へと入り、咲もそれに続く。

内側から施錠し終えて、彼は再び咲の手を取り、何かに気が付いたらしく顔色を変えた。
眉根を寄せた滝沢を見上げて、咲は首を傾げる。彼は咲の視線に気が付いていないのか、ぽつりと言った。


「あ。キスし忘れた」
「…うん」


頷くと、滝沢は照れくさそうに笑った。
自分から言い出しておいて忘れるってすごいよね、と咲は軽口を叩く。
そうだよね、ごめん。 滝沢は失敗したなあと悔いるように廊下を進む。
楽しそうに、くすくすと笑った咲を横目でちらりと見て、滝沢は意地悪げに言った。


「じゃあ、部屋に行ったら、しようか?」


悪戯っぽく笑んだ滝沢に、小さな笑い声を上げていた咲は押し黙り、また顔を真っ赤にして呻いたけれど、結局最上階にある彼の部屋に辿り着いても、それを拒みはしなかった。

■END

ご挨拶に伺ったり、人様の滝咲を拝見させていただこうとニマニマしてたのに…え、日付変わった? どういうこと? もう月曜日? ああ、なんて迂闊…orz
ああ悔しい! 時間ができ次第、人様の滝咲を楽しませていただこう…全力で!

それもこれも一心不乱にFateをやってたのがいけない。や、…やりたかったから、悪いことじゃないけど。うん。
UBWプレイの勢いでFateネタも投下しちゃったけど、あの後ちゃんと凛√はクリアした。よしホロウできる。たぶん。桜√はパスしてだいじょぶかな、ホロウ…ごにょごにょ。

えーと。たぶん、甘い…話? ……たぶん。
なんか哀華さんって、こういう際どいネタ好きだよね…。うん、好きなんだけどさ。エロネタも大変美味しくいただけます。
とか言うと、滝咲エロを書く為の布石にしか思えなくなってきたなこの話。読んだ後にタイトルを見ると、そんな匂いがしてくるかも(笑)
まあ、それ系に需要があるのかどうかは分かりませんけど、哀華さんはこういうも好きです。(上手く表現できたかは分からないけど。)

滝沢くんと咲ちゃんって、男女としてはなかなか進まない気がする。
精神的な繋がりとか、ちょっとした触れ合いで満足しそうなイメージ。
これは、それをだいぶ繰り返した後、そろそろ焦れてきたかも、というお話です。
どっちが焦れてきたのか…。にしても、楽しかった、すごく(笑)

拍手ありがとうございますー!!(*´∀`*)

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滝咲いいですよね!!更新楽しみにしてます。
あやかんぼ 2010/04/15(Thu)01:46:15 編集
あやかんぼさんへ
はじめまして! 応援ありがとうございます!
滝咲が可愛くて可愛くて堪りません。
たぶん今後も妄想していくので、お付き合いくださいませ~^^
哀華  【2010/04/15 20:29】
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【 推奨CP 】
東のエデン/滝沢朗×森美咲
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