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エデンに響き渡るのは、焦がれた声。
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■東のエデン/滝咲&エデンメンバー
※劇場版Ⅱの後(ED後)のお話です。ご注意ください。

ご覧になる方は、「つづきを読む」からお願いします。

present for you



滝沢が再び姿を消したあの日から、≪東のエデン≫は豊洲のショッピングモールの片隅を陣取り、ニート達との共同生活をスタートさせていた。
平澤がニート達を相手に交渉し、みっちょんと板津がシステムを構築・バージョンアップさせ、春日がそれのメンテナンスを手伝い、おネエが事務的な処理を片付け、咲は宣伝や企業サイトの構築等を一手に引き受けていた。
彼が消えてから長いような短いような月日が経ち、ニート達との接し方にも慣れてきた、そんな冬の季節。

店じまいの時刻になろうかという時に、滝沢 朗が帰ってきた。

ノックに気付いて来客かと出迎えた春日が、声もなく後ずさる。
滝沢は開いたドアを押してあっさりと室内へ足を踏み入れると、皆からの視線が集まるのを待っていたかのように軽く手を上げた。

「やあ。久しぶり」
「……、滝沢、くん?」

あんぐりと口を開けた平澤、にやりと笑う板津、椅子の上で足をぶらぶらさせるみっちょん、見守るように優しい視線を注ぐおネエ。
そして咲の掠れた声に目を細くして、滝沢は微笑んだ。

たとえ世間がどれだけ知らん顔しても、この豊洲は違う。此処は滝沢 朗を待つ人間で構成された、王様の居ない小さな国─── だった。彼が姿を晦ましていた、つい先刻までは。

ぱたんと後ろ手にドアを閉めると、彼は荷物をどさりと置いた。
我に返った平澤が滝沢に今までどうしていたのか、あれからどうなったのか、此処までどうやって来たんだ、だのと質問攻めにしたが、滝沢はあっさりと『いろいろね』の一言で黙殺してしまった。
気になるところではあったが、今はそれより滝沢が戻ってきたという事実が喜ばしかった。

「皆もうご飯食べた?」
「ううん、まだだけど…タッくん、もしかしてそれ、下の売店で買ってきたの?」
「うん。何か美味しそうだったから。多めに買ってきたから、みっちょんも食べれば?」
「おう、ビンテージ! 一個くれ」
「おー、パンツ! はい、どうぞ」

肉まんを板津に渡すと、滝沢は彼と笑顔をかわした。
大ぶりの肉まんを受け取った板津は、無邪気に笑い声をあげて、バシンと滝沢の背を叩いた。彼もまた、滝沢の帰還を待ち望んでいた。

「やーん、もうタッくんったらァ。連絡してくれれば準備したのにィ。ねえ、咲?」
「え? あ、う、うん…」
「森美先輩?」
「放心してるな」

この場に居る誰もが咲のリアクションが一番大きいのではないかと思っていたが、逆に彼女の反応は小さかった。事態が上手く飲み込めていないらしい。
自席に座ったままデスクの向こうに立つ滝沢を凝視している咲は、ぴくりとも動かない。ただ滝沢を見つめている。
そんな彼女の様子に肩を竦めた平澤は、密やかに微笑んだ。

「ところで滝沢。それは何だ?」
「ん? ああ、まあ着替えとか、いろいろ。あと、こっちはプレゼント」

使い込まれたショルダーバッグの他に、どうもついさっき購入したかのような気配のする袋がひとつ、平澤の目についた。

「プレゼント?」
「悪いけど平澤の分はないよ?」
「誰が欲しいと言った、誰が!」

からかわれていることは百も承知だったけれど全力で突っ込んで、平澤はふと考える。
それは誰へ向けられたものなのだろう、と。
中身はなんだろう、と。
知らなくてもいいことを考えた。
それはたぶん、彼と彼女の二人だけの秘密でもよかった筈だ。
けれど滝沢はそのプレゼント片手に踏み出すと、フリーズしている咲の横まで歩いていき、立ち止まる。

「咲」

名前を呼ばれて、くしゃりと咲の表情が歪んだ。泣きそうな瞳が、滝沢を真っ直ぐに見つめている。
一変した空気に気が付いて、その場に居合わせた誰もが口を噤む。

強張った表情。緊張の解けない咲を見つめて、滝沢はそっと彼女の頭に手を伸ばす。
たった一撫で。魔法のように、身体から余計なものが抜けていく。肩の力が抜けて、急に座っていることさえ難しいと咲は背凭れに寄りかかった。

「これ、プレゼント。誕生日には間に合わなかったけど」
「…、あけてもいい?」
「勿論」

上手く言葉が出てこない。当たり前のような返答が、とても遠い世界の出来事のようだ。
でも耳に届いている、滝沢の声は幻聴なんかじゃない。頭を撫でたその手の感触も、咲が知っている滝沢のもので。
はあ、と深く息を吐く。そうでもしないと何もできなくなりそうだ。涙を堪えることさえも。
滝沢から受け取ったプレゼントは軽く、袋の中を覗くと淡い色のワンピースが畳まれている。
ぱちり、と不思議そうに瞬いてから、咲はおずおずと顔を上げた。

「似合うかなと思って。もしかして、そういうのダメだった?」
「そんなこと、ないよ。…うん、ありがとう。滝沢くん」

咲は噛み締めるようにゆっくりとそう言った。
とても大切な宝物を抱き締めるように、受け取ったプレゼントを見つめている。
滝沢はそんな彼女を優しく見下ろし、ふとひとつのお願いをした。

「そうだ、せっかくだから着替えて見せてよ。
 春物だからまだ着るには早いかもしれないけど、此処なら風邪引く心配もないしさ」
「え、今?」
「そう、今。ダメかな?」
「ううん、私はいいけど…。平澤くん?」

何故かほんのりと頬を赤らめた平澤が、咲に呼ばれてハっとする。
全然ズレていない眼鏡の位置を気にしながら、目も合わせない。だが、咲の言わんとすることはしっかりと理解していたようで、平澤はスタッフルームとも言うべき部屋へ通じるドアを指差した。

「そこを使うといい」
「うん、ありがとう」

椅子から立ち上がると、咲は一度だけ滝沢をちらりと見つめた。
気が付いた滝沢は、にこりと笑う。
恥ずかしいのか、慌てたように小走りで咲はドアの奥へと消えた。

「ちょっとォ、タッくん。咲に何あげたのよォ?」
「ていうか…タッくん、あの服、何処で買ってきたの?」
「ん、下だよ。此処に来るまでに、ちょっと目に入ってね」
「ええ!? フリマで買ってきたんですか…?」
「大丈夫。ちゃんと新品だったから」
「そういう問題ではなくてですね、今この豊洲のショッピングモールでは、あなたの顔を知らぬ者はいないというくらいあなたは有名なんですよ?」
「ビンテージが有名なのは、なにも此処だけじゃないけぇのぉ。日本中が知っとる顔っちゅうんも、総理大臣並だのぉ」

春日の驚愕の言葉に続き、滝沢から受け取った肉まんをぺろりとたいらげた板津が頷く。
そう、彼等にはとても不思議だった。此処に滝沢が居ることが、ではなくて、滝沢が此処に居るのにどうして誰も騒ぎ立てなかったのか、それが不思議でならなかった。
滝沢は連日フリーマーケットを開催しているニート達の目を掻い潜り、何食わぬ顔でひょっこりと戻ってきた。いつか見たミリタリージャケットを着込んで、あの時と変わらぬ笑顔のままで。
それは、魔法の携帯を使わずして可能なことなのか?
誰もが疑問に思ったが、誰もが何となく答えを知っていた。滝沢は不思議な男だ。魔法の携帯がなくても、彼は限りなく魔法に近いことを可能とする。
だから今回もきっとそうなのだ。もしかしたら、本当に堂々とこのショッピングモールの中を歩いてきただけなのかもしれない。声をかけられても気さくに返し、人波に隠れながら。

「皆も肉まん食べる? ピザまんもあるよ」
「あんまんは?」
「一個だけ。みったん、欲しいの?」
「……だから、みったん違う」
「可愛いなあ、みったん。はい、あんまん」
「おネエ、タッくんがいじめる!」
「あらァ、久しぶりだしいいんじゃないの?」
「えー、おネエまでそんなこと言う…」

不満な顔を見せながらも、しっかりとあんまんを受け取っているみっちょんだった。
おネエがお茶を用意すると席を立ち、板津がピザまんに手を伸ばす。
春日は『大杉先輩に連絡してきます』と、電話をかけに表へ出て行った。

滝沢は咲が腰掛けていた椅子を陣取り、のんびりとそんな彼等を眺めていた。
並んであんまん、ピザまんを頬張っているみっちょんと板津の前を通り、平澤は滝沢の前に立った。

「滝沢」
「うん?」
「お前、前にも咲に洋服をプレゼントしていたな?」
「あぁ、初めて平澤達に会った時の話? うん。まあ、プレゼントっていうか、選んだだけだけど」

思い出して、滝沢は少し遠い目をした。もう戻らない楽しかっただけの一瞬を懐かしむ、どこか寂しい瞳だった。
滝沢の反応に、平澤は息を吐く。滝沢 朗の記憶を持っていることを念の為に確認してみたが、間違いなく彼は平澤の知る滝沢だ。
確認するまでもなかったのだけれど。安心したかったのかもしれない。
一息つくと、平澤はもうひとつ、個人的に質問したかったことを急に思い出した。それは、滝沢という不審人物を調査しようとあの頃はまだ無人だった豊洲のショッピングモールへ乗り込んだ日、胸に湧いた疑問だ。
今の今まで問いかける機会がなく、すっかり忘れていたが、服をプレゼントしたということで思い出した。
再会して早々に下世話な質問かもしれなかったが、『なに?』と滝沢の視線が続きを促してきている。
こほん、とひとつ咳払いをしてから、滝沢にしか聴こえないように、平澤は声を潜めた。


「眉唾物の一般論だが、まことしやかに囁かれている話がある。プレゼントには意味がある、という話だ」
「…?」


様子の変わった平澤に、ただごとではないと感じたのか、滝沢は少し表情を引き締めた。
大人しく耳を傾ける滝沢に、平澤は間を置いてから、ずっと抱えていた疑問をぶつけてみた。


「男性から女性に洋服をプレゼントする場合、『その服を脱がせたいからだ』という噂話がある。
 真偽のほどは分からないが、滝沢。お前まさか、咲にそんなつもりでプレゼントした訳ではあるまいな?」


眼鏡の奥で、平澤の眼光が鋭くなった。
こんなことを訊く自分が恥ずかしいとは思うのだが、滝沢がそんなつもりでプレゼントを渡していたら一言物申す勢いだ。
それに、この男にもそういった欲求があるのか、個人的には興味があった。

滝沢は一度瞬きをすると、おかしそうに唇を吊り上げて、

「どうかな?」

と、からかうように軽やかなリズムで言った。
そんな返答では、彼がどういうつもりだったのか分かる筈もない。どうとでも取れる回答に、滝沢らしさを感じずにはいられない。
こうなるともう、滝沢から明確な回答を得ることが難しいと、平澤は知っている。
負けたよ、と平澤は悔しそうに笑った。

「ちょっとタッくん、ほっとくとパンツが全部食べちゃうよ?」
「え、もうないの? じゃあ買ってきてよ、みっちょん。なんか俺、有名人らしいし?」
「えー。一臣?」
「…なくなったら俺が買ってきてやる。その点は心配するな」
「流石じゃ、んぐ」
「こらパンツ! お前、何個食った? 食いすぎじゃないか?」
「そうかのお?」
「そうだよ。絶対。だってパンツ、これでもう三個目だよ」
「食べすぎでしょ」

じっとりとした目で呟いたみっちょんの言葉を耳にして、滝沢は楽しそうに笑った。

王子様が焦がれていたお姫様の登場まで、あと少し。

■END

ED後で『滝沢くんが帰ってきた』お話。
ひょっこり前触れなく帰ってくるんじゃないかなと思う。
…どうするのよ哀華さん、そのネタ書いちゃって良かったの?>別ネタで妄想中なのに!
とにかくエデンメンバーが大好きすぎる。書いていてとても楽しかった!
なんか滝咲というか、滝沢くんと咲ちゃんを見守るエデンメンバーかも…。
書いていてとても楽しかったけれど、滝咲としては足りないかなあ…。す、すみません。
あと、大杉くんごめんね。いれられなかった…。(笑)

じゃないよ! そうじゃなくて、ええと下世話なお話でごめんなさい…。
いやこれ、テレビシリーズ#06からずうっと気になってたんだよ……。
絶対に書いてやると思っていたネタで、ED後にする必要もなかったんだけど、劇場版Ⅱを見てしまった後だからどうしても印象が強くて。
どっちかというとテレビシリーズに含めたかったネタだけど、力量及ばず。
本当にそんな意味があるのかどうかは知りませんが、服のプレゼントって難しいよね。
滝沢くんはすごい。咲ちゃんのこと熟知しすぎだよ。可愛すぎる、二人とも。

そして拍手、コメントありがとうございます…!
滝咲がとても可愛くて妄想しないと生きていけない気がする今日この頃、急激な侵食に哀華さんどうすればいいか分かりません。(笑)
拍手やコメントで喜んでます。騒いでます。ありがとうございます!

えぇと、27日(土)、吉祥寺のパルコ行ってこようかなと思います。
いくら使い込んでくるんだろう…(遠い目) 自重しないと…いけないんだけど…。
滝沢くんのジャケットが欲しいけど、可愛く着れる自身がない。そもそも自分が可愛くないよ!
余裕があったら、中野のufotableカフェにも行く予定です。もうエデンの原画展は終わっちゃったけど、これまた死ぬほど大好きなOVA/TOS別名公式ロイコレ動画(笑)の原画展やってるので♪
TOSとエデンどっちも大好きすぎて死にそうだ。本当に都合よく分裂したい。

というわけで明日もがんばるぞ、金曜日!

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哀華
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雑多妄想部屋。

【 推奨CP 】
東のエデン/滝沢朗×森美咲
他/男女王道CP

【 好き 】
I've Soundが大好き。特にKOTOKOちゃんらぶ。
fripSide(第一期・第二期)も好きです。naoすき。
ダークトランス系がとてもすき。
エデン影響でsfpも好き。
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