■東のエデン/滝咲
※劇場版Ⅱの後(ED後)のお話です。ご注意ください。
ご覧になる方は、「つづきを読む」からお願いします。
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Third Kiss.
瞬く間に夕焼けが通り過ぎて、既に空には夜が広がっていた。
ショッピングモールの中は暖かいが、外に居る人はマフラーに顔を埋めたり、コートの襟を立ててぴたりと冷たい風を防いでいる。
「寒そう」
ぽつりと呟いて、咲は足早に滝沢の部屋へ向かった。
「滝沢くん?」
呼びかけながら足を踏み入れると、気が付いた滝沢が開いていた本を閉じた。
ソファから立ち上がり、咲を迎えるように歩いてくる。
「思ったより早かったね」
「うん。ちょっと早いけど、大丈夫かな?」
「もちろん。寧ろ、咲と過ごせる時間が増えてラッキーって感じ?」
何でもないことのように言って、滝沢は嬉しそうな笑顔を見せる。
とくん、と高鳴る胸に気付かれないよう、咲はそっと目を伏せた。
滝沢は、恥ずかしくてなかなか口に出せないことを、すんなりと言葉にしてしまう。
こっちの胸の裡さえお見通しとしか思えないことも、やってのける。
差し伸べられた手に自分の手を重ねて、咲はそっとその温もりを握りしめる。
「咲は夜ご飯、どうするの?」
「滝沢くんは?」
「たまには、どっかで食べる?」
くるり、と振り向いた滝沢に、咲は少し迷ってから首を振った。
外食も悪くはないけれど、今はただ、滝沢と二人でのんびり過ごしたい。
気恥ずかしくて言葉にはできなかったけれど、はにかんだ笑みで何となく滝沢には伝わったらしい。
「コート、かける?」
「あ、うん」
「ちょっと待ってて、ハンガー取ってくるから」
静かに手を離して、滝沢が背を向ける。
咲はコートを脱いで、ソファの上に鞄を置く。今日は寒かったので、セーターを着てきたのだけれど、室内ではすこし暖かすぎるかもしれない。
ふう、と一息つく。と、滝沢が戻ってきた。ハンガーを受け取り、コートをかけ、滝沢にそれを渡す。彼は壁際にそれを引っ掛けて、ソファにどさりと座った。
気のせいか、いつもよりやや身体が重たそうな動作に見えて、咲は微かに眉を寄せる。
「…滝沢くん、ちょっと疲れてる?」
「そう見える?」
「うん…」
「そっか。でも、少しだけだし。咲が居てくれた方が、元気出るから、帰らないでほしいんだけど?」
立ちっぱなしの咲に、ニッと笑って見せる。
咲が居てくれた方が、元気出る。そんなことを真っ直ぐに言われたら、どうすればいいのか分からない。かあっと頬が火照って、咲は慌ててソファに座った。
「そうだ。ちょっと、いい?」
「え…、え?」
立ち上がった滝沢が、咲の隣にゆっくり腰掛ける。
滝沢の体重分、沈んだソファ。真横にある温もり。ドキドキする。
驚きと戸惑いで目をぱちくりさせている咲にお構いなしで、滝沢は手を伸ばし、咲の肩を抱く。
そのまま抱き寄せて、自分からも距離を縮めた。
まるで、いつかの水上バスの夜のような。
確かにそれは脳裏を過ぎったワンシーンに似ていたけれど、結果的にそれは異なるものだった。
あの時の夜と違い、滝沢はもっと身を寄せてきた。それだけではなく、あの時、ノブレス携帯を掲げていた腕が前に回り、咲を腕の中に閉じ込める。
実に際どいところに当たっている滝沢の腕に、咲は声も出ない。ぱちぱちと激しく瞬いて、ぎこちなく滝沢の顔色を窺う。
「…滝沢、くん?」
「元気出る方法、見付けたよ」
「え?」
「咲を抱き締めると、なんか元気出るんだ」
「……そう、なの?」
「うん。でさ、もっと元気が出そうなこと、あるんだけど」
「…?」
首を傾げる咲のすぐ目の前で、滝沢はすこし照れくさそうに笑う。
不思議そうな瞳を見据えて、微かに声を潜め、彼は言った。
「キス、してもいい?」
「─── っ、…!?」
ぴくり、と震えた咲が、益々頬を赤らめて声にならない悲鳴を上げた。
身動ぎをするけれど、上手く動けない。背中に回る腕と、胸元に当たる彼の腕が、咲の逃げ道を塞いでいる。
なんでいきなり、とパニックになっている咲に、滝沢は言う。
「今すぐじゃなくても、いいよ?」
「え?」
予想外の言葉に、きょとんとした顔をする咲。
彼女の慌てっぷりに、ごめん、と謝ってから、滝沢は真意を明かす。
「咲は、何回キスしたか、覚えてる?」
「……う、うん」
「俺も覚えてるよ。だからね、三度目はお互い合意の上で」
キスしたいんだけど、と。からかうように、だけどいつもより低い声で、滝沢は囁いた。
さっきとは明らかに違う、抗えない熱が胸から溢れ出して、身体中を駆け巡っていく。
一度目は、滝沢からだった。出逢って間もない、冷たい雨が降る夜のこと。
二度目は、咲からだった。半年を経て再会した彼との、ひとつだけの約束。
どちらも相手の意思を確認せずに、唇を重ねていた。
ドキドキがドクドクに変わり果てて、咲は滝沢の腕の中で縮こまる。
「急だったよね、ごめん。でも俺はそう思ってるから、咲が同じように思ってくれるまで、待つよ」
優しい声で断ってから、滝沢はそっと咲から僅か、距離を取る。
胸元にあった腕がゆっくりと上がっていき、静かに、落ち着けるように、咲の頭を撫でる滝沢。
とんでもないスピードで脈打つ心臓を認めて、咲は俯いたまま、ぽつりと零す。
「、いいよ」
頭を撫でていた手が、不自然に止まる。
一秒。二秒。三秒。無反応。もう耐えられない。
思い切って、咲は顔を上げる。恐る恐る、といった風ではあったけれど、ちらりと隣の彼へ目を向ける。
消え入りそうな声を確かに捉えた滝沢は、真っ赤な顔できょとんとしていた。
ぱちり。ぱち。 咲と同じタイミングで、滝沢が瞬く。
何だかおかしくなって、咲がくすりと笑みを零すと、滝沢も堪えきれなくなったのか、あははと笑った。
ひとしきり笑いあってから、滝沢は大きく息を吐く。
「ちょっと、今はむずかしいや。俺、今すごい頬緩んでるし」
「うん。そうだね」
「やっぱそっかぁ」
どこか残念そうに、でも照れくさそうに頷いて、滝沢は頭を掻いた。
咲はそんな彼を見つめて、そっと唇を動かす。
「滝沢くん」
「ん?」
「私は、いつでもいいから」
す、と滝沢の目がすこし細くなる。
男の子の顔付きだ、と咲はまたドキリとした。
「─── 俺、忘れないっていうか、忘れられないよ、それ?」
「…、ん」
こくり、と咲は頷く。
ぎこちないけれども、確かな肯定に、滝沢は深呼吸した。
「咲…ありがとう」
「うん」
赤い顔のまま、滝沢は笑った。
優しくて嬉しい、あたたかな笑顔に、咲も恥ずかしさを忘れて微笑んだ。
■END
三度目のキスは同意の上で、というのを主張してみたかった。
二回ちゅーしてるけど、どっちも相手の意思確認してないんですよ?(確認するまでもなかったのかもしれないけど!)
なら三度目は合意の上で、と。寧ろ確認の為に滝沢くんが咲ちゃんに訊いて咲ちゃん照れちゃう可愛いなぁもうとか考えていたのに、気が付いたら滝沢くんも照れ照れでした。
あれおかしいな。哀華さんが照れる滝沢くんを書くなんて、うん、珍しい。たぶん。
書いていて楽しかったです。読んでくれてありがとうございます。
本日も寝る間を惜しんで妄想です。だって滝咲書きたいんだもん…!
そして時間がアレなのでチェックせずに投稿するという連日やらかしている暴挙に出ます。
神山監督のついったー………。
……死ぬほどドキドキして眠れる自信がない…!
気になる。最初よく読まずに『第二期!?』とか思ってしまった。
落ち着いて読み返した三度目くらいで、ようやくそういうことじゃないんだと理解。(たぶん)
都合のいい願望が先走りすぎて、すごいひとりで泣きそうになってました。病気です。病気。
第二期とかOVAとかスペシャルとかを考えて、とんでもなく泣きそうになりました。あははは。
今はとにかく『東のエデン』が楽しくてしょーがない。
付き合ってくれるジュイスが居てくれるから、読んでくれてるお客さんがいるから(こんな好き勝手な妄想に付き合ってくれる誰かがいるから)、というのが大きいんですが、ジュイスとゴソゴソやってるのが楽しい。
ゴソゴソがカタチになるといいんだけれど…。間に合うかな。
それではおやすみなさい。
今日もお付き合い、ありがとうございました。
瞬く間に夕焼けが通り過ぎて、既に空には夜が広がっていた。
ショッピングモールの中は暖かいが、外に居る人はマフラーに顔を埋めたり、コートの襟を立ててぴたりと冷たい風を防いでいる。
「寒そう」
ぽつりと呟いて、咲は足早に滝沢の部屋へ向かった。
「滝沢くん?」
呼びかけながら足を踏み入れると、気が付いた滝沢が開いていた本を閉じた。
ソファから立ち上がり、咲を迎えるように歩いてくる。
「思ったより早かったね」
「うん。ちょっと早いけど、大丈夫かな?」
「もちろん。寧ろ、咲と過ごせる時間が増えてラッキーって感じ?」
何でもないことのように言って、滝沢は嬉しそうな笑顔を見せる。
とくん、と高鳴る胸に気付かれないよう、咲はそっと目を伏せた。
滝沢は、恥ずかしくてなかなか口に出せないことを、すんなりと言葉にしてしまう。
こっちの胸の裡さえお見通しとしか思えないことも、やってのける。
差し伸べられた手に自分の手を重ねて、咲はそっとその温もりを握りしめる。
「咲は夜ご飯、どうするの?」
「滝沢くんは?」
「たまには、どっかで食べる?」
くるり、と振り向いた滝沢に、咲は少し迷ってから首を振った。
外食も悪くはないけれど、今はただ、滝沢と二人でのんびり過ごしたい。
気恥ずかしくて言葉にはできなかったけれど、はにかんだ笑みで何となく滝沢には伝わったらしい。
「コート、かける?」
「あ、うん」
「ちょっと待ってて、ハンガー取ってくるから」
静かに手を離して、滝沢が背を向ける。
咲はコートを脱いで、ソファの上に鞄を置く。今日は寒かったので、セーターを着てきたのだけれど、室内ではすこし暖かすぎるかもしれない。
ふう、と一息つく。と、滝沢が戻ってきた。ハンガーを受け取り、コートをかけ、滝沢にそれを渡す。彼は壁際にそれを引っ掛けて、ソファにどさりと座った。
気のせいか、いつもよりやや身体が重たそうな動作に見えて、咲は微かに眉を寄せる。
「…滝沢くん、ちょっと疲れてる?」
「そう見える?」
「うん…」
「そっか。でも、少しだけだし。咲が居てくれた方が、元気出るから、帰らないでほしいんだけど?」
立ちっぱなしの咲に、ニッと笑って見せる。
咲が居てくれた方が、元気出る。そんなことを真っ直ぐに言われたら、どうすればいいのか分からない。かあっと頬が火照って、咲は慌ててソファに座った。
「そうだ。ちょっと、いい?」
「え…、え?」
立ち上がった滝沢が、咲の隣にゆっくり腰掛ける。
滝沢の体重分、沈んだソファ。真横にある温もり。ドキドキする。
驚きと戸惑いで目をぱちくりさせている咲にお構いなしで、滝沢は手を伸ばし、咲の肩を抱く。
そのまま抱き寄せて、自分からも距離を縮めた。
まるで、いつかの水上バスの夜のような。
確かにそれは脳裏を過ぎったワンシーンに似ていたけれど、結果的にそれは異なるものだった。
あの時の夜と違い、滝沢はもっと身を寄せてきた。それだけではなく、あの時、ノブレス携帯を掲げていた腕が前に回り、咲を腕の中に閉じ込める。
実に際どいところに当たっている滝沢の腕に、咲は声も出ない。ぱちぱちと激しく瞬いて、ぎこちなく滝沢の顔色を窺う。
「…滝沢、くん?」
「元気出る方法、見付けたよ」
「え?」
「咲を抱き締めると、なんか元気出るんだ」
「……そう、なの?」
「うん。でさ、もっと元気が出そうなこと、あるんだけど」
「…?」
首を傾げる咲のすぐ目の前で、滝沢はすこし照れくさそうに笑う。
不思議そうな瞳を見据えて、微かに声を潜め、彼は言った。
「キス、してもいい?」
「─── っ、…!?」
ぴくり、と震えた咲が、益々頬を赤らめて声にならない悲鳴を上げた。
身動ぎをするけれど、上手く動けない。背中に回る腕と、胸元に当たる彼の腕が、咲の逃げ道を塞いでいる。
なんでいきなり、とパニックになっている咲に、滝沢は言う。
「今すぐじゃなくても、いいよ?」
「え?」
予想外の言葉に、きょとんとした顔をする咲。
彼女の慌てっぷりに、ごめん、と謝ってから、滝沢は真意を明かす。
「咲は、何回キスしたか、覚えてる?」
「……う、うん」
「俺も覚えてるよ。だからね、三度目はお互い合意の上で」
キスしたいんだけど、と。からかうように、だけどいつもより低い声で、滝沢は囁いた。
さっきとは明らかに違う、抗えない熱が胸から溢れ出して、身体中を駆け巡っていく。
一度目は、滝沢からだった。出逢って間もない、冷たい雨が降る夜のこと。
二度目は、咲からだった。半年を経て再会した彼との、ひとつだけの約束。
どちらも相手の意思を確認せずに、唇を重ねていた。
ドキドキがドクドクに変わり果てて、咲は滝沢の腕の中で縮こまる。
「急だったよね、ごめん。でも俺はそう思ってるから、咲が同じように思ってくれるまで、待つよ」
優しい声で断ってから、滝沢はそっと咲から僅か、距離を取る。
胸元にあった腕がゆっくりと上がっていき、静かに、落ち着けるように、咲の頭を撫でる滝沢。
とんでもないスピードで脈打つ心臓を認めて、咲は俯いたまま、ぽつりと零す。
「、いいよ」
頭を撫でていた手が、不自然に止まる。
一秒。二秒。三秒。無反応。もう耐えられない。
思い切って、咲は顔を上げる。恐る恐る、といった風ではあったけれど、ちらりと隣の彼へ目を向ける。
消え入りそうな声を確かに捉えた滝沢は、真っ赤な顔できょとんとしていた。
ぱちり。ぱち。 咲と同じタイミングで、滝沢が瞬く。
何だかおかしくなって、咲がくすりと笑みを零すと、滝沢も堪えきれなくなったのか、あははと笑った。
ひとしきり笑いあってから、滝沢は大きく息を吐く。
「ちょっと、今はむずかしいや。俺、今すごい頬緩んでるし」
「うん。そうだね」
「やっぱそっかぁ」
どこか残念そうに、でも照れくさそうに頷いて、滝沢は頭を掻いた。
咲はそんな彼を見つめて、そっと唇を動かす。
「滝沢くん」
「ん?」
「私は、いつでもいいから」
す、と滝沢の目がすこし細くなる。
男の子の顔付きだ、と咲はまたドキリとした。
「─── 俺、忘れないっていうか、忘れられないよ、それ?」
「…、ん」
こくり、と咲は頷く。
ぎこちないけれども、確かな肯定に、滝沢は深呼吸した。
「咲…ありがとう」
「うん」
赤い顔のまま、滝沢は笑った。
優しくて嬉しい、あたたかな笑顔に、咲も恥ずかしさを忘れて微笑んだ。
■END
三度目のキスは同意の上で、というのを主張してみたかった。
二回ちゅーしてるけど、どっちも相手の意思確認してないんですよ?(確認するまでもなかったのかもしれないけど!)
なら三度目は合意の上で、と。寧ろ確認の為に滝沢くんが咲ちゃんに訊いて咲ちゃん照れちゃう可愛いなぁもうとか考えていたのに、気が付いたら滝沢くんも照れ照れでした。
あれおかしいな。哀華さんが照れる滝沢くんを書くなんて、うん、珍しい。たぶん。
書いていて楽しかったです。読んでくれてありがとうございます。
本日も寝る間を惜しんで妄想です。だって滝咲書きたいんだもん…!
そして時間がアレなのでチェックせずに投稿するという連日やらかしている暴挙に出ます。
神山監督のついったー………。
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落ち着いて読み返した三度目くらいで、ようやくそういうことじゃないんだと理解。(たぶん)
都合のいい願望が先走りすぎて、すごいひとりで泣きそうになってました。病気です。病気。
第二期とかOVAとかスペシャルとかを考えて、とんでもなく泣きそうになりました。あははは。
今はとにかく『東のエデン』が楽しくてしょーがない。
付き合ってくれるジュイスが居てくれるから、読んでくれてるお客さんがいるから(こんな好き勝手な妄想に付き合ってくれる誰かがいるから)、というのが大きいんですが、ジュイスとゴソゴソやってるのが楽しい。
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